IIJがデジタル通貨の金融サービスに参入 さまざまな通貨の取引や交換を可能に

2018年01月25日 22時55分

インターネットイニシアティブ(IIJ)は1月24日、デジタル通貨の取引、決済を行う金融サービス事業に参入すると発表した。銀行や流通など17社が出資する合弁会社「ディーカレット」を設立。出資各社と連携し、「デジタル通貨取引のスタンダード」を目指す。

2018-01-26_233344

IIJ執行役員でディーカレットの代表取締役社長に就任した時田一広氏は、ビットコインをはじめとする仮想通貨の台頭や法定通貨のデジタル通貨発行に関する具体的な取り組みが始まったことを挙げ、「通貨のデジタル化は、通貨自体が『データとしてネットワーク上を移動する』ということ。銀行などから、場所や時間を問わず、いつでもお金を自分の手元に持ってくることができるようになる」という。

2018-01-26_233459

一方で、同社の鈴木幸一代表取締役会長は「海外に比べ現金決済の比率が高い日本では、(金融サービスの)維持管理コストが高くなっている」と指摘。経済産業省の調査によれば、2015年の日本のキャッシュレス決済比率は19%で、アリペイなどモバイル決済の拡大が著しい中国は55%など、他国とは大きな開きがある。

「インターネットの次の一番大きなステップである、決済や通貨のデジタル化に対応したいと思い、ディーカレットを作った。いずれ円などの法定通貨も、デジタル通貨やデジタル金融になる世界がくる。日本のデジタル化は遅れていると思うが、推進源の1つになりたい」(鈴木会長)

デジタル通貨を交換して決済
具体的なサービスとして、18年度下期から順次、ウォレット(デジタル通貨を管理するアプリ)を通じたデジタル通貨の交換サービスと決済サービスを開始する。仮想通貨や企業の独自通貨、デジタル化した法定通貨など多数のデジタル通貨を管理できる口座機能を提供、24時間365日リアルタイムでの取引・交換、ECサイトや実店舗での決済、電子マネーやモバイル決済サービスへのチャージを可能にする。

2018-01-26_233540

サービスの特徴

デジタル通貨口座は「保有している通貨を置いておき、必要な通貨に交換する仕組み」(時田執行役員)。法定通貨の取引モデルのやり方をベースに、プラットフォーム内または外部仮想通貨取引所と接続する予定で、決済時には支払い側と受け取り側が別の通貨であっても1回の取引で完結する仕組みを検討する。

扱う通貨は現時点では未定。変動の大きい仮想通貨については「どんなものを扱うかや、扱う通貨がどんな状態かのモニタリングを慎重にやっていかなければならない」と話す一方、「流通していくことで、安定性のあるものや信頼性のあるものが使われるなど、通貨そのものが選別されてくることも想定している」(時田執行役員)という。自分たちが通貨を発行することは考えておらず、あくまで「ニュートラルな立場で、デジタル通貨を流通させる」とした。

2018-01-26_233636

セキュリティについては本人確認を実施する他、マネーロンダリングや外部からの攻撃にも対処できるよう、国内の金融機関と同等のセキュリティを実現する考え。利用者の取引履歴などをブロックチェーンへ記録することも検討する。

19年度には、店舗やECサイトなどにAPIを提供し、各社のアプリやサービスと連携可能にする。業種や企業は限定せず、個人間、法人と個人、法人間などさまざまな決済を可能にすることで日本のキャッシュレス決済のインフラ作りを目指す。

「あらゆることが簡略化、ネット化されることで、通貨のないシンプルな生活ができるのではないか」(鈴木会長)。2022年度には利用者数は500万人、売上高は100億円を超えることを目指すとした。

ディーカレットにはIIJの他、伊藤忠商事、QTnet、ケイ・オプティコム、SOMPOホールディングス、第一生命保険、大和証券グループ本社、東京海上日動火災保険、日本生命保険、野村ホールディングス、東日本旅客鉄道、ビックカメラ、三井住友海上火災保険、三井住友銀行、三井不動産、三菱東京UFJ銀行、伊藤忠テクノソリューションズ、電通の17社が出資。ヤマトホールディングスも出資を検討中という。

参照元 : itmediaニュース