「我々はもうけるだけ」ウナギ増産、中国の怪

2015年07月26日 18時11分
 
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絶滅の恐れがあるとして資源管理の対象となっているウナギだが、中国の養殖業者は増産の動きを加速させている。

絶滅危惧種に指定されているニホンウナギは稚魚が減少していることなどから、日本、中国などが非公式協議で養殖量を制限する方針を確認。今年も養殖量を2割減らすことで合意しているはずが、中国国内の養殖の現場を歩くと、全く異なる実態が浮かび上がる。

◆伸びる国内消費

「制限なんて非現実的だ。我々は今後もウナギでもうけるだけ」。養殖業者が集まる福建省福清。高級外車に乗って現れた業者の男性は、ウナギが水しぶきを上げる養殖池を眺めながら、きっぱり語った。

この業者は中国南部に養殖場を6か所展開。昨年の出荷量はニホンウナギを中心に5000トンに上り、売り上げは約4億元(約80億円)。今春から江西省で新たな巨大養殖池を建設中で、増産に乗り出す構えだ。

中国の業界サイト「水産養殖網」によると、海南省で2014年に12万平方メートル超の巨大養殖場建設が始まった。湖北省でも養殖場の新規建設が計画されており、各地で養殖ウナギの増産に向けて設備投資が進んでいる。

増産を支えているのが、中国の国内市場だ。ウナギはこれまで食材としてはなじみが薄く、食卓に上ることはほとんどなかったが、09年頃から消費拡大で宣伝を強化した結果、栄養価の高い食材として注目されるようになった。この業者の場合、日本などへの輸出は5割どまりで、残る全量はいまや国内向けだ。

◆「闇ルート」

ニホンウナギは養殖量が制限されており、中国側は今年6月、国内での昨年11月以降の養殖は「上限量を大幅に下回った」と報告している。中国では養殖に使う稚魚の漁獲量も減少しており、中国農業省の担当者は「増産はあり得ない」と断言する。ただ、国内のウナギ消費については「明確な統計はない」といい、養殖業者の実態も正確に把握できてはいない。

稚魚が減る中、増産が可能なのはなぜなのか。福清の業者は、稚魚を扱う「闇ルート」の存在をほのめかす。この業者は、香港にある「本社」と呼ばれる組織を通じて仕入れていると証言。ほとんどが北アフリカや南米などで調達した稚魚だといい、「抜け道なんていくらでもある」と語った。

参照元 : 読売新聞