顔認証:大阪駅ビルでの実証実験 市民抗議でめど立たず

2014年03月06日

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JR大阪駅(大阪市北区)の駅ビル「大阪ステーションシティ」で、顔認証カメラで通行人を追跡する大規模な実証実験が4月から始まる予定だったが、市民からの抗議が寄せられたため、開始のめどが立たなくなっていることが分かった。公共の場所での実験は全国初。自身のデータを無断で収集・利用されることへの市民の反感が強いことが表面化した。【日下部聡、石戸諭】

実験は、独立行政法人「情報通信研究機構」(本部・東京都)が、JR西日本や同ビルを運営する同社子会社「大阪ターミナルビル」の協力を得て、今年4月から2年間行う予定だった。

機構によると、駅ビル内に専用カメラ約90台を設置し、各カメラが数十人の顔を識別して撮影する。撮影した人物の顔の特徴を数値化してIDを付け、その人が駅ビル内でどう移動するかを追跡する。映像は顔の特徴を数値化した時点で消去し、データから個人が特定されることはないと説明している。

狙いは、人の流れを把握して、災害時の避難計画を立てる際に有効なデータになるかどうかを検証することだという。計画は昨年11月に公表され、既にカメラも設置された。収集したデータはJR西に無償で提供される予定だった。

しかし、今年1月6日に計画が新聞で報じられると、JR西には「勝手に顔を撮ってほしくない」「データを何に使うのか」などの抗議や問い合わせが数件寄せられたという。これを受け、機構は有識者による第三者委員会を設けて実験手法について検討することを決めた。

しかし、打診した有識者に断られるケースが重なり、人選が難航しているという。機構の能見正・ネットワーク研究本部統括は「批判を受けている以上、予定の開始時期にこだわらず、丁寧に議論していただく必要がある」とし、4月開始を事実上断念することを明らかにした。

機構は旧郵政省電波研究所が前身。情報通信技術の研究開発や事業支援をしている。

JR西は「駅ビルの利用者に実験をどう告知するかは検討中だ。データは防災目的に限定して使う」(広報部)と説明している。

参照元 : 毎日新聞



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