貧困対策や若者支援に活用=「休眠預金法」が成立

2016/12/2(金) 12:21配信

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金融機関の口座で10年以上放置されている「休眠預金」を民間公益活動の財源として利用できるようにする議員立法の法律が、2日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。

「忘れ去られたお金」のうち、毎年500億〜600億円が子どもの貧困対策や若者支援、福祉、地域活性化などに活用されることになる。

公布後1年半以内に全面施行される。全面施行から1年経過後に発生した休眠預金が対象となるため、実際に現場で活動する団体にお金が届くのは数年後になる見通し。預金者は施行後も請求すれば払い戻しを受けることができる。

この法律では、銀行口座の休眠預金を預金保険機構に移管した上で、中立的な「指定活用団体」に交付。そこから地域の事情に詳しい財団などの「資金分配団体」を通じて、実際に公益活動をするNPO法人など各種団体に助成や貸し付けを実施する。

内閣府は、新たに設置する審議会の答申を受けて休眠預金活用の基本方針を策定し、指定活用団体の業務運営を監督する。休眠預金を活用する団体は公募で選ばれるが、不正利用の防止など使途の透明性確保が課題になりそうだ。

参照元 : 時事通信


年間1千億円の休眠預金活用 フジマキ氏が手法に疑問

2016/12/15 07:00

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長らく使われていない銀行口座の預金を活用する「休眠預金活用法」。メリットはあるものの“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、その問題点を指摘する。

私は旧東京教育大学附属中のとき、水泳部。元大関貴ノ花(全国2位)がバタフライ選手だった杉並区立東田中学と並び、我が校は東京では強豪校だった。私以外はみな逆三角形の体形で、落ちこぼれそうな私のみ正三角形。しかし、先日会ったら、みんな円錐形に。途中経過は違っても、落ち着く先は同じのようだ。

銀行で10年以上放置された口座のお金を福祉に使う「休眠預金活用法」が、参議院で2日可決された。

休眠預金の大半は、残高1万円未満。合計年1千億〜1100億円発生する。これを預金保険機構に移したうえで、公益活動に携わるNPO法人や自治会などに、助成・貸し付け・出資できるようにする。預金者が求めれば、払い戻される。

新聞各紙は実務上の課題を指摘しつつも、おおむね好意的なとらえ方だ。確かに、弱者を守るために余剰金を生かすのはすばらしい。

しかし、諸手を挙げて賛成するほどすばらしいかというと疑問も残る。参院の審議でその点を質問した。

資産の再配分は税金や社会保障によるのが普通で、それ以外で行政の関与は特殊。特殊な例は競馬・競艇・競輪等の公営ギャンブルが思いつく。これは「競馬等に興じる人たち」という同一グループ内での再配分で、掛け金を払う人はその点を事前に了解している。

しかし、本法は預金者という同一グループを超えた再配分となり、特殊だ。

休眠口座のお金の処分には、この法律のようにNPO法人への分配以外に、二つの方法が考えられる。

一つは従来どおり個別銀行の利益金とする考え方。タクシー料金を払う際の、「お釣りはいらない。取っといて」と同じとすれば、この処置の正当性はある。

もう一つはNPO等に分配せず、機構の収入としてとどめる考え方。金融危機発生時に1千万円までの預金を保護するため、機構は民間銀行から保険料を徴収している。その資金の一部とするのだ。保険料が十分にたまっていればその分減額でき、預金者への利息増加につながる。預金者という同一グループ内での再配分だ。

所得再配分は、税か社会保険料で徴収したお金を、予算か国会の承認を得て分配するのが基本だと思う。どこかにお金が残っているたび、再配分の法律を作るのは本道ではない。多用されるべきではない。

ところで、昨今の米銀は残高の少ない預金の口座保持手数料を要求している。コストばかりかさみ、収益に結びつかないためだ。収益体質が弱くなっている邦銀も今後、同様な手数料を考えざるをえないだろう。

そうなれば、休眠預金の大半を占める残高1万円未満の預金残高は、10年が来る前にゼロとなる。口座保持手数料として、個別の銀行の利益になるということだ。結果、この法律を作ろうと作るまいと、「休眠預金は個別銀行の利益」という従来の姿に戻ってしまわないだろうか?

※週刊朝日 2016年12月23日号

参照元 : dot.