クマムシに大量の外来DNA、驚異の耐久性獲得の一助に?

2015年11月26日(木)15時5分配信
 
2015-11-27_022914

【AFP=時事】顕微鏡でしか見えないほど小さいにもかかわらず非常に強い耐久性を持ち、クマに似ていることからその名がつけられた「クマムシ」が、細菌や植物などの全く類縁関係のない生命体から大量のDNAを獲得していることを解明したとする研究結果が発表された。これらの「外来」遺伝子は、クマムシが極めて過酷な環境で生き延びる助けになっているという。

緩歩(かんぽ)動物とも呼ばれるクマムシは、世界中に生息し、体長は通常0.5ミリほどで、8本の脚でゆっくり不器用に歩く。環境適応力が非常に高く、極端な温度下でも生存可能だ。マイナス80度の冷凍庫に10年間入れられた後でも、解凍から20分後には再び動き回り始めることができる。

クマムシのゲノム(全遺伝情報)を解読した米ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)の研究チームは、全体の6分の1近くに相当する17.5%が異種生命体に由来するものであるという驚きの事実を発見した。大半の動物に関しては、ゲノムのうちで外来DNAに由来するものの割合は1%に満たない。

23日の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文の共同執筆者で、ノースカロライナ大教養学部のボブ・ゴールドスティーン(Bob Goldstein)氏は「数多くの動物が外来遺伝子を獲得していることは知られていたが、これほどの度合いで起きるとは思いも寄らなかった」と述べた。

■進化に関する新知見

今回の研究ではまた、DNAがどのように継承されるかに関する変わった新事実が浮かび上がった。ゴールドスティーン氏らは、クマムシが約6000の外来遺伝子を獲得していることを発見。その大部分は細菌からの遺伝子だったが、他にも植物、菌類、古細菌の単細胞生物の遺伝子もあった。

ゴールドスティーン氏の研究室に所属する博士研究員で、論文の第1執筆者のトーマス・ブースビー(Thomas Boothby)氏は「極度のストレスに耐えて生存できる動物は、外来遺伝子を獲得する傾向が特に高い可能性がある。そして細菌遺伝子は、動物遺伝子よりもストレス耐久能力が高いのかもしれない」と指摘した。実際に、細菌は数十億年もの間、地球上の非常に過酷な環境を生き抜いてきている。

クマムシは、遺伝子の「水平伝播」によって外来遺伝子を獲得する。これは、DNAを親から継承するのではなく、生物種間で遺伝物質を交換することを指す。ブースビー氏は「遺伝子の水平伝播はより広く受け入れられ、知られるようになってきており、進化と遺伝物質の継承、ゲノムの安定性についての知識を変えつつある」と語る。

外来DNAは無作為にゲノム内に取り込まれるとみられるが、ゲノム内に残るこのDNAのおかげで、クマムシは非常に過酷な環境でも生存できるのだという。

研究チームによると、クマムシのDNAは、極度の乾燥状態などの極めて強いストレスにさらされると細かく断片化される。細胞に水分を戻すと、DNAを格納している細胞核と細胞膜は一時的に物質を通しやすい状態になり、水分子以外の大型分子も容易に通過できるようになる。細胞が水分を取り戻すにつれて、クマムシ自身の断片化したDNAが修復されると同時に外来DNAが取り込まれ、異種生命体から伝播される遺伝子の「パッチワーク」が形成される。

「よって、生命の『系統樹』について考えるのではなく、生命の『クモの巣』や、枝から枝へと横断する遺伝物質を考えることが可能になる」とブースビー氏は説明した。【翻訳編集】 AFPBB News

参照元 : AFP=時事


微小動物「クマムシ」、宇宙空間で生き延びた

2008年09月14日 22:58

img_4ac0a3ac25a7df104493a3fb9686e419313404

【9月14日 AFP】小さな無脊椎(むせきつい)動物「クマムシ」が、強烈な放射線が飛び交う宇宙空間に直接さらされても生き延びたとの論文が、米科学誌「カレントバオロジー(Current Biology)」(9月9日号)で発表された。

研究を行ったスウェーデンのクリスチャンスタード大学(Kristianstad University)のIngemar Jonsson氏が率いる研究チームによると、宇宙空間で動物の生存が実験で確認されたのは今回が初めてだという。

緩歩動物とも呼ばれるクマムシは、8本脚で体長0.1-1.5ミリ。約600種が存在し、山頂から深海まで地球上のあらゆる場所に生息するが、湿った地衣類やコケ類に暮らすものが多い。

クマムシは、マイナス272℃から151℃以上の温度で生存でき、放射線にも強く、数年間の乾燥にも耐え、300気圧の圧力下でも生き延びることができる。

研究チームは、前年9月に打ち上げられた欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)の人工衛星「FOTON-M3」に乾燥させたクマムシを乗せた。クマムシたちは上空270キロの軌道上で、太陽からの放射線が容赦なく飛び交う宇宙空間に直接さらされた。

クマムシたちが地球に戻った後、研究者たちはその多くが宇宙の過酷な環境を生き延びたことを確認した。中には地上より1000倍以上強い強烈な紫外線を浴びても死ななかったものもいた。クマムシは地球帰還後に普通に繁殖したという。

クマムシが紫外線に耐えるメカニズムは分かっていないが、研究チームによると「クマムシを乾燥に強くしている細胞レベルの仕組みが、全体的な耐性の強さに関わっている可能性がある」という。(c)AFP

参照元 : AFP=時事


キミはクマムシを知ってるか?1mm以下の微生物であるにも拘わらず、真空、X線、紫外線、そして300℃〜12-0℃まで耐えるという、生命の常識を逸した驚異の生命体だ。クマムシのスペシャリスト-の話に耳を傾けてみよう。

Tardigrades or "Water Bears" are the only creatures that can survive the extreme conditions in the vacuum of outer space.




・<乾眠>乾燥してタン(樽)状態になると120 年間乾燥に耐える。
・摂氏100度で6時間耐える。
・多量の放射線にも平気。
・真空状態で20ヶ月生存。
・270度に8時間耐える。

裸のまま宇宙旅行をして生きて帰ってこられる地上最強の生物。でも、煮られたら乾燥が保てないので温泉には弱いかも。

<乾眠 クリプトビオシス>
クマムシなどの動物が乾燥などの厳しい環境に対して、活動を停止する無代謝状態のこと-。水分などが供給されると復活して活動を開始する。

クリプトビオシスは無代謝の休眠状態のこと。緩歩動物はクリプトビオシスによって環境-に対する絶大な抵抗力を持つ。周囲が乾燥してくると体を縮めて樽状になり、代謝をほぼ-止めて乾眠(かんみん)と呼ばれるクリプトビオシスの状態の一種に入る。

樽(tun)-と呼ばれる乾眠個体は、下記のような過酷な条件にさらされた後も、水を与えれば再び動-き回ることができる。ただしこれは乾眠できる種が乾眠している時に限ることであって、-全てのクマムシ類が常にこうした能力を持つわけではない。さらに動き回ることができる-というだけであって、その後通常の生活に戻れるかどうかは考慮されていないことに注意-が必要である。

乾眠状態には瞬間的になれるわけではなく、十数時間をかけてゆっくりと乾燥させなけれ-ばあっけなく死んでしまう。乾燥状態になると、体内のグルコースをトレハロースに作り-変えて極限状態に備える。

水分がトレハロースに置き換わっていくと、体液のマクロな粘-度は大きくなるがミクロな流動性は失われず、生物の体組織を構成する炭水化合物が構造-を破壊されること無く組織の縮退を行い細胞内の結合水だけを残して水和水や遊離水が全-て取り除かれると酸素の代謝も止まり、完全な休眠状態になる。

▪ 乾燥 : 通常は体重の85%をしめる水分を0.05%まで減らし、極度の乾燥状態にも耐える。
▪ 温度 : 151℃の高温から、ほぼ絶対零度(0.0075ケルビン)の極低温まで耐える。
▪ 圧力 : 真空から75,000気圧の高圧まで耐える。
▪ 放射線 : 高線量の紫外線、X線等の放射線に耐える。X線の致死線量は57万レントゲン。(ヒト-の致死線量、500レントゲン)
▪ 宇宙空間に直接さらされても10日間生存していたことが発見され、動物では初めて。