7月にさらなる値上げラッシュ いよいよ円安が食卓を直撃へ

2015.06.07 16:00
 
komugiko

「円安」で食品関係の値上げラッシュが続く。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

今年、食品の価格が次々に引き上げられている。理由は言わずもがな。世界的な需要増加に伴う食品価格の高騰に加え、円安が進行。輸入食材を中心に仕入れ価格が高騰し、これまでの価格の維持が難しくなったからだ。

年初からの動きをまとめると、まず1月に麺類が値上げを行った。即席麺の主要メーカー、日清食品、東洋水産、サンヨー食品などが一斉に即席麺の値上げに踏み切り、日清フーズ、日本製粉、昭和産業がパスタの価格を家庭用、業務用ともに引き上げた。小麦はその多くを海外からの輸入品に頼っており、円安の影響をまともに受けた形だ。

2月は冷凍食品。味の素冷凍食品、テーブルマーク、ニチレイフーズなどが家庭用冷凍食品の価格を改定。冷凍食品は3月にも他メーカーも後を追った。同月にはアイスクリームもハーゲンダッツやロッテなど数社が一斉値上げ。4月にはカゴメとキッコーマンがトマトケチャップやトマト加工品を。さらに各乳業メーカーがバターやチーズを値上げした。

そしてこの7月、さらなる値上げラッシュがやってくる。象徴的なのはチョコレートで、ロッテが「ガーナ」「クランキー」など主要8品目を、森永製菓も「ダース」「小枝」など10品目を値上げする。明治にいたっては10品目を値上げし、14品目について容量減量と、24品目について事実上の”値上げ”をおこなう。

全国菓子卸商業組合連合会の総会で理事長が「中小メーカーも恐れずに値上げに踏みきってほしい」と発言したことで、他メーカーの追随も予想される。消費者にとってはうれしくないトレンドかもしれないが、チョコレートはこの数十年、もっとも値上げの少ない食品のひとつ。ロッテにいたっては、1974年以来41年ぶりの値上げであり、デフレ脱却を象徴するできごとのひとつともいえる。

また小麦粉関連の製品の値上げも続く。製パン大手の山崎製パンは、7月1日出荷分から「ロイヤルブレッド」「芳醇」などの食パン14品や、「薄皮つぶあんぱん」などの菓子パン107品を含む168品目を値上げする。

同じタイミングで、日本製粉や日清フーズは家庭用小麦粉の価格を改定。海外産の小麦は政府が国家貿易として一元的に輸入し、製粉企業や醤油メーカーなどに卸す仕組みとなっている。海外からの買い付け価格を基準に設定される政府の小麦売渡価格が3%引き上げられたのも大きな要因だ。

日本経済新聞社がまとめた飲食業調査では、2014年度に値上げをした外食企業は7割にのぼり、2015年度も価格を引き上げると半数近くが回答したという。実際、今年度に入ってから、モスバーガーやバーガーキングなどのファストフード店の値上げも相次いでいる。

日本の”食産業”は、長きに渡るデフレ下において食材原価、人件費、光熱費などを吸収してきた。だがここに来て「円安」など抗いようのない”外圧”にさらされ、さまざまな業種・業態で値上げに踏みきる動きが出てきた。2017年の消費税引き上げや、自社の取り扱い商品が軽減税率の対象となるか否かといった不安も大きい。もはや日本の”食産業”も、消費者の安売り要求に付き合ってばかりはいられない。

参照元 : NEWSポストセブン