年金5兆円消滅! 中国経済崩壊でさらに溢れる下流老人たち(1)

2015年09月19日 14時00分
 
^9C1

「人間50年〜」とは、織田信長が出陣の際に好んで舞った能の一節。今や日本人は「人間90年〜」の時代に入った。と同時に、長生きすることは大きなリスクを伴っている。

「早く死にたい」。昨年9月に放送されたNHKスペシャル『老人漂流社会“老後破産”の現実』は衝撃的だった。生活保護の基準以下の年金収入で暮らしている独居老人が日本に300万人も存在し、そのうち生活保護を受けている人は70万人程度にすぎず、残りの200万人強は貯蓄もなく、身寄りもないギリギリの生活を強いられているという。こうした老人は、いつしか「下流老人」と呼ばれるようになった。

実のところ日本の高齢者貧困率は高い。厚生労働省の『国民生活基礎調査』(2012年)によれば、同省が設定した貧困ラインは年収手取り122万円だが、現に約5人に1人がこのライン以下の水準で生活している。その理由は大きく2つ。保険料未納付による無年金、そして厚生年金や共済年金といった「公的年金の二階部分」を受給できない国民年金のみの受給者だ。

OECD(経済協力開発機構)加盟34カ国を調査したデータ('10年時点)では、日本の65歳以上の高齢者の貧困率は19.4%。これは米国とほぼ同じレベルだが、イタリア11%、ドイツ10.5%と比べるとほぼ倍だ。英国やスウェーデン、カナダなどは10%を切っており、これら諸国には下流老人は極めて少ない。

「昨年9月時点における日本の80歳以上の高齢者は964万人と前年から35万人ほど増加し、そのうち90歳以上は172万人と前年比11万人も増えています。本来なら喜ぶべき長寿社会なのに、一方で生活保護受給世帯が今年6月時点で162万5941世帯と、統計を取り始めた1951年以来最多を更新しました。そのうちの約半数の79万世帯が高齢者世帯なのです。これらの世帯は、この1年で4万世帯も増加しており、下流老人はますます増える傾向にあるといえるのです」(生活困窮者支援NPO)

今年6月30日、走行中の東海道新幹線の車内で、都内在住の71歳の男がガソリンに火を付け焼身自殺した。逃げ遅れた女性1人が死亡し、28人が重軽傷を負う大惨事となったが、自殺の動機に注目が集まった。

犯行前に男は「こんな額の年金で、どうやって生活すればいいのか。35年も掛けたのにひどい」と年金受給額への憤りを知人らにぶつけていた。自殺前、生活保護申請の手続きを知り合いの区議に相談していたようだが、結局受けていない。

「年金を払えるのに払っていない、ある意味自業自得の生活困窮者もいる。それに比べればこの男は、働いてちゃんと年金を払ってきた人です。このような人を救えない日本の社会保障制度には、やはりどこか欠陥があるのでしょう」(社会派ジャーナリスト)

男は国民年金よりはマシな額を受給していたようだ。それでも擁護するわけではないが、こう言いたかったのではないか。《なぜ年金だけで生活できないのか、なぜ屈辱感を伴う生活保護を申請しなければならないのか…》と。

この心情は、この世代特有のスティグマ感(恥辱感心理)なのだろう。

参照元 : 週刊実話


年金5兆円消滅! 中国経済崩壊でさらに溢れる下流老人たち(2)

2015年09月20日 14時00分

その老後の“虎の子”が5兆円も消滅してしまった。厚労省の森浩太郎参事官が、8月27日の民主党との会合で「計算上はそういった理論も成り立つ」と認めたことが発端だ。それにしても、厚労省のノー天気ぶりには今さらながら開いた口がふさがらない。

「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF:三谷隆博理事長)は、27日に'15年4〜6月期の運用実績を発表しました。それによると6月末時点での運用実績は2兆6489億円の黒字基調だったのですが、これには中国のバブル崩壊に端を発した世界同時株安の影響は織り込まれていない。GPIFの国内株の構成割合は23.39%で、金額にすると約33兆円です。GPIFが“基準点”にしている6月の日経平均株価は、年初来高値の2万952円を付けた日もありましたが、世界同時株安後には1万7000円台に大暴落しています。下落率は約15%ですから単純計算で約5兆円もの損失を被ったことになるのです」(民主党中堅議員)

GPIFは日本株だけでなく外国株も22.32%保有しているから「マイナス額は5兆円では済まない可能性もある」と、この中堅議員は続ける。

安倍晋三首相は昨年1月、ダボスの世界経済フォーラムの基調講演で「成長持続へGPIFを改革する」とアピールし、海外投資家の日本株への期待をあおることで株価を下支えさせてきた。これが現在の安倍政権下で行われているアベノミクス「第3の矢」だが、どっこい中国のバブル崩壊で計画通りにいかない可能性が出てきた。そもそもGPIFの前身は、木端役人らによる15年間の資産運用の結果、1兆7000億円の累積損失を発生させた揚げ句に廃止された悪名高い『年金福祉事業団』だ。

年金不祥事で思い出すのは'12年に発覚した『AIJ投資顧問』による厚生年金基金資産消失事件。厚生年金基金の拡大過程で、厚生官僚やノンキャリアの天下りが全国的に行われ、結局、厚生年金基金制度が廃止される事態を招いたのだから、この事件での年金官僚の過失責任は極めて大きかった。

GPIFは今年6月末時点での運用資産額が約141兆円と世界最大で、そのことから市場関係者の間では“クジラ”と呼ばれている。ところが、このクジラは図体がデカイ割には職員数がたった70人ほどしかいない。年金資産を運用している他国の機関と比較すると、例えばカナダ所得比例年金は、ざっと15兆円の運用資産しかないのに職員数は811名の体制を取っているのとは大きく異なる。

独立行政法人は、職員を増やすことやプロを招いて高額報酬を提供することもままならないという人件費のしばりがきつい。その結果、70人の“ド素人”が「世界最大の巨額資産を世界最低賃金で動かしている」(有力運用会社役員)というマンガのような状態になってしまっているのだ。他国の同業者より低い賃金で、誰が他人のカネを増やそうと懸命に働くだろうか。

「GPIFは6月末時点での資産構成割合を公表しましたが、昨年6月に17%だった国内株比率が、上限の25%に迫っている。そうなると、国内株の買い増し余地はほとんどなく、これ以上のアベノミクスによる買い支えは期待できません。これが投資家心理を冷え込ませ、株価下落に拍車を掛ける恐れがあります」(市場関係者)

トルコの首都アンカラで9月5日まで開かれていた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明は、中国経済の減速から世界経済の不透明感が強まっていることを踏まえ、「経済回復を維持するために断固たる行動を取る」と宣言して閉幕した。翻って日本では、ますます庶民生活を窮地に追い込みかねないGPIFの最高投資責任者兼理事・水野弘道氏(49)が「中国の大失速は想定外」と他人ごとのように振る舞っている。国民の命綱を握るこの人物は、一体どういうキャラクターなのか。

「水野氏は英投資会社コラー・キャピタルから鳴り物入りで招かれました。しかし、コラーのファンドの規模は数千億円程度で、彼には100兆円を超える運用経験がありません。能力に“?”という人は多いですね」(前出の運用会社役員)

年収3000万円と理事長に次ぐナンバー2の座を射止めることができたのは、同氏を推薦した世耕弘成官房副長官の力が大きいといわれている。

「貧乏人の世界には興味のない永田町住人のお友達に、国民の虎の子を任せて大丈夫なのかと心配になります。厚労省関係者と足しげく高級料亭に通う姿も目撃されていますしね」(同)

GPIFは国民の年金積立金が原資。その運用責任者が高級料亭大好きで、下流老人は「1日280円の弁当1つを朝昼晩3回に分けて」でジッと我慢…。

こんな格差社会に誰がしたのか。怒りや悲しみを通り越し、心が凍る思いだ。

参照元 : 週刊実話