株暴落でGPIF運用損 「消えた年金」は2週間で7兆円突破

2016年1月20日

1c06fa7af3a09e7f6770d69f03afb90420160119125457397

平均株価の下落幅は、大発会からの10営業日で2000円を超えた。この間、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用損が7兆円を超えたというショッキングなデータが飛び出した。国民の年金はいよいよヤバくなってきた。

金融評論家の近藤駿介氏(アナザーステージCEO)がこう指摘する。

「GPIFの2015年7〜9月期の公表資料をベースに試算したところ、年初から先週末15日までの間に約7兆3800億円の損失を出した可能性が高いことが分かりました。日経平均の大幅安に加え、海外株や外債も値を下げているからです。7〜9月期の運用損約7兆8899億円に迫る勢いです」

約135兆円の運用資産を持つGPIFは昨年、基本ポートフォリオを大幅に組み替えた。国債35%、国内株25%、外債15%、海外株25%などで構成されている。

近藤氏は7〜9月期のポートフォリオを維持しているとの仮定で、昨年末時点の資産推計額をハメ込み、収益率のベンチマークごとに試算を行った。すると、GPIFの運用資産は年初から15日までの時点で5・26%も目減りしていたのである。

国内市場の値動きを見ただけでも運用成績はヒドイありさまだ。国内株、外債、海外株は軒並みマイナスだし、円高も進行している。唯一プラスなのは、皮肉にも6割だった構成比率を一気に引き下げた国債だけだった。株安、円高がさらに進めばGPIFの損失はさらに大きくなる。

「安倍首相は国会答弁で〈民主党政権下の累積収益額は4.1兆円だったが、それ以降の収益は33兆円プラス〉〈年金運用は長期的に見てどれぐらい収益を上げているか〉などと強弁していましたが、問題は収益だけではありません。国民が知りたいのは、将来の年金支払額に対してGPIFの資産がどれほど残っているのかということ。保険料が引き上げられ、支給額が切り下げられている現状からいって十分な資産が残っているとは考えにくい。その状況でハイリスクな株式への投資割合を引き上げている場合なのか。野党はこのあたりをガンガン攻めるべきです」(前出の近藤駿介氏)

これでGPIFの自主運用を認めさせたら、年金は藻屑と消えかねない。

参照元 : 日刊ゲンダイ


○緊急事態条項、GPIFの巨額損失…軽視される重大テーマ

また、他にも報じるべき重大テーマはたくさんある。たとえば、安倍総理は、参院選で与党が勝てば、改憲に乗り出すことを幾度も言及している。だが、改憲の目玉とされる「緊急事態条項」は、「独裁条項」、「民主主義破壊条項」と言うべき危険性をはらんでいる。

要は、内閣総理大臣が「緊急事態」であると判断した際に、国会を通さず、内閣が法律を制定でき、かつ個人の人権を制限できるというものだ。つまり、ナチスがドイツを支配した際に活用された「全権委任法」と同様の危うさがあるのだ。日本での議会制民主主義を根本から変える可能性がある条項だけに、もっとその是非についてメディア上で議論されるべきであろうし、人々も関心を持つべきことだ。

最近で言えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金運用で兆円単位で損失が出ていることも、重大テーマだろう。これまで、GPIFは国内債券(60%前後)をメインに年金を運用し、株式市場への充当は、国内株式12%前後、外国株式12%前後と、せいぜい3割弱にとどめていた。

これは国民の財産である年金を守るため、比較的リスクの低い運用を行ってきたからだ。しかし、安倍政権は、2014年10月、GPIFの運用比率を変え、総資産の約半分を株式市場に充当。これには当初から年金をハイリスクにさらすことになるのでは、と野党や識者らの懸念の声があった。

実際、GPIFの年金運用見直しは、安倍政権の支持率と密接につながる日経平均株価の底上げに、一時的につながったものの、その後、中国経済の減速の影響などによる世界同時株安に伴い、日経平均株価も下落。それにより、昨年秋以降から、兆円単位で年金の損失が続いている。

昨年1月の時点で安倍政権は、今後の年金運用の最大損失額を「21兆5000億円」と見積もる想定を、民主党の長妻昭衆議院議員の質問主意書に対する答弁書の中で示していた。こうした予測が現実のものとなりつつある。それでなくても、年金崩壊が危惧される中、安倍政権のGPIF改革の是非は、間違いなくもっと論議されるべきことだ。

参照元 : 志葉玲 フリージャーナリスト