報酬引き下げで増殖「介護士売春」報告書

2015年01月18日 13時00分
 
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第三次安倍政権がスタートし、アベノミクスのさらなる飛躍が期待されているが、その最中に政府が手を付けたのは、以前から危惧されていた弱者切り捨ての非道な経済政策だった。

総選挙の余韻も冷めやらぬ昨年12月17日に、安倍政権は「介護保険サービスの提供価格(介護報酬)を、'15年に3%前後引き下げる方針を固めた」と発表。これが原因で、ただでさえ低所得の介護士たちの賃金カットが具体化し、業界の不満が一気に爆発しかかっているのである。

介護施設に勤めるケアマネージャーがこう語る。

「介護業界は『キツイ』『汚い』『薄給』で俗に“2KH”と呼ばれている。現場で働く介護士の平均月収は、手取り14〜15万円前後と他業種より10万円近くも安いのです。しかも、慢性的な人手不足で夜勤や残業に追われ、高齢者の排泄処理や入浴介護に明け暮れている。この上賃金をカットされたら、もはや生活できない者も急増しそうな雲行きなのです」

ちなみに、この安月給の影響からか、近年介護業界には施設から施設を渡り歩く、「介護渡り鳥」と称される介護士たちが大増殖。現在でも全国にある介護施設の約6割(5万カ所前後)が、慢性的な人手不足に喘いでいる状況なのだ。

「そのため、多くの施設は常に人員を募集している。また重労働な上に仕事が高齢者の死を見つめる面が強いため、うつ病患者や介護利用者を虐待する者、パチンコ依存症に陥る者も増えている。この上、賃金が下がれば施設はさらなる人手不足と環境悪化の波にさらされることは必至。勤務する介護福祉士や介護士も、精神的に追い詰められる者が続出するはずなのです」(介護業界関係者)

もっとも、本誌が危惧しているのは、この介護報酬の引き下げがもたらしつつある“危うい現象”なのだ。

「実は、介護士にはバツイチや生活苦の女性の割合が異常に多い。子供を抱えていたり、年齢的に働き口のない主婦らが介護職員初任者研修を受けて勤務し、糊口をしのいでいるんです。そのため、最近では副収入を求める女性介護士たちが売春するケースが増えているという。その矢先に賃金カットが実現すれば、これが加速化する可能性も高いのです」(介護業界事情通)

実際、本誌が取材したところ、こうした現象はすでに広まりつつあるようなのだ。関東圏の某デイサービスの関係者がこう明かす。

「勤務先の施設に30代後半で、高校生と中学生の子供を抱えた美貌のシングルマザーがいるのですが、彼女は子供たちの塾代にも事欠くありさまだったのです。ところが、そんな状況を見かねた工場経営者の知人男性がある時、月額7万円で愛人契約を持ち掛けた。結局、彼女は悩んだ末にこれを受け入れ、今では介護業務の傍ら愛人として家計を支えている状態なのです」

また、別の介護福祉士がこう話す。

「以前、ウチの施設にA子という20代の女性がいたが、収入の少なさを解消するためにSNSなどを使って援助交際をしまくっていたんです。非番の日に男たちを相手に売春をし、月額14〜15万円を稼いでいた。彼女は仕事にも誇りを持って頑張っていたんですが、別の介護士に話したことから噂が広まり、結局職場を退職していきましたね」

この介護福祉士によれば、今ではこの手の身体を張った副業は業界でも珍しくないという。しかも恐ろしいのは、それが介護の現場でも問題になり始めていることなのだ。

在宅介護のヘルパーとして1日6人の高齢者宅を巡回している訪問介護士のB子さん(43)が言う。

「独居の高齢者男性は、上肢や下肢の一部が麻痺している人が多い。こうしたご利用者は痴呆症でもなく頭もはっきりしているし、性欲も普通にあるんです。そのため、以前は介護の最中にお尻や胸を触られることも絶えなかったんですが、別の介護士に相談したところ、こうした行為に料金を設定して小遣い稼ぎをしていると聞き、私もやってみたんです。今では胸やお尻を下着の上から撫でるのが5分2000円。仲間内にはさらに多くの報酬で、射精に導く行為をしている者もいるそうです」

要は、介護中のプチ売春で生活費を穴埋めしているのだが、こうした行為は今後、介護報酬のカットが進めば、さらに増える可能性を秘めているのである。

もっとも、介護売春の実態は別にしても、気になるのは生活苦に喘ぐ介護従事者らの実情を知る政府が、なぜ今報酬の引き下げに舵を切ったのかという点だろう。実はそこには、安倍政権の周到な思惑が渦巻いているのだ。

「厚労省の調査では、介護認定者が低コストで入居できる特別養護老人ホームは利益率が8.7%と高率で、1施設平均3億円もの内部留保があるという。だが、これは業界にのさばるブラック企業が経営の施設収益を加味したもので、多くの特養や老健(老人保健施設)は薄氷を踏むような経営をしているのが実情です。つまり、安倍首相はこの上辺だけのデタラメなデータを基に、膨らみ続ける介護費の切り崩しに手を付けたというのが真相なのです」(政治部記者)

つまり、介護への支出を減らし、アベノミクスを底上げするのが狙い。ただ、こうした弱者切り捨てのスタンスが続けば、いずれ安倍政権が落日を迎える日も近いと言わざるを得ないだろう。

参照元 : 週刊実話


「介護報酬引き下げ」が職員を地獄に落とす

2014年12月25日
 
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私は6年ほど前に小さなデイサービスを立ち上げ、経営者兼スタッフとして介護施設の運営に携わった経験があります。あまりの過酷さに3年ほどでギブアップしましたが、少しでも業界をかじった人間からすると、安倍首相は介護の現状を少しも理解していないと思う。衆院選が終わった途端、介護報酬引き下げの方針を決めたことには驚きました。

介護現場はただでさえ賃金が低く、全労連の調べによると平均年収は207万円。介護福祉士の資格を取得した正社員でさえ手取りは14万円ほどです。離職率は2割近くに達し、約6割の事業所が人手不足にあえいでいる。介護報酬を引き下げれば、働き手がますます逃げ出すのは歴然です。

介護で働く人の勤務は、ざっと次のようなものです。早番、遅番、夜勤があり、施設によっては週1〜2回の泊まり勤務もあります。勤務時間が不規則なうえ基本的に、会話するのは高齢者と同僚だけ。ストレスのたまりやすい職場環境といえるでしょう。排泄や風呂の世話で腰痛を抱える職員も多い。

この仕事内容で、平均年収207万円では離職率が高いのも当然です。仕事がハードなうえ、報酬が低いので正直、人材が集まりません。もちろん、スキルが高く、真面目に取り組む方もいるのですが、懸命に働くほど、体と神経を壊してしまいかねない。実際、トラブルを起こす職員もいます。「お泊まりデイサービス」を経営する知人からこんな悩みを聞きました。

「最近目立つのは、何十回注意しても新人職員をいじめる中年職員です。履歴書を見ると飲食、パチンコなど人手不足の職種を転々としているのが特徴です。休憩中に恋愛の話をしようものなら、ムキになって怒る、あるいはうつむいてしまう。ああ、この人は子供の頃から勉強でも恋愛でも成功体験がないまま中年になったのだなと思いました。老人虐待をする傾向もあります」

女性職員の場合、生活が苦しいためか、売春する人が後を絶ちません。都内のグループホームに勤める20代の女性職員は「上司が売春していて現場が混乱している」とこう嘆く。

「利用者さんのお金を盗んだり、近所の男性を相手に体を売っているのです。本人はわからないと思っているけど、売春も窃盗現場も同僚に目撃されています」

介護は本来、専門知識と経験を必要とします。ところが、リーマン・ショック後、政府は介護現場に大量の失業者を送り込んだ。その結果、社会性に問題がある職員が増えています。介護報酬を引き下げたら、さらに現場の環境が悪くなるのは確実です。

▽なかむら・あつひこ 1972年、東京生まれ。専修大学卒。ノンフィクションライター。著書に「ワタミ・渡邉美樹 日本崩壊させるブラックモンスター」(コア新書)。「崩壊する介護現場」(ベスト新書)。近著「日本の風俗嬢」(新潮新書)も話題。

参照元 : 日刊ゲンダイ