エジプトの国民的麻薬「ハシシ」とは
2018/1/9(火) 12:03配信
エジプトの国民的麻薬「ハシシ」をご存知か。広く普及する背景と、カイロの社会的状況を新書『“闘争と平和”の混乱 カイロ大学』より紹介する。
ストレス解消法とは?
交渉術とはまた、話がそれますが。
ストレス解消にはもうひとつ人気の手段。それが、ハシシ(大麻)です。
ハシシは12世紀から800年も続くカイロっ子の嗜みであり、ささやかな楽しみです。
現在にいたるまで、歴代のカイロ統治者が取り締まりを試みましたが、だれもうまくいっていません古くはマムルーク朝のスードゥーン総督(アミール)が1376年、撲滅に乗り出しています。大麻畑を焼き払い、常習者の歯を引き抜く刑に処しました。その後の為政者も、栽培や流通の禁止、在庫の没収を繰り返しますが、庶民の反乱にあい断念しています。
エジプト政府の調査では、人口の約1割がハシシを含む麻薬を習慣にしています(2007年)。その倍の2割、1500万人が吸っているとする専門家の見解もあります(『米国PRI(国際公共放送)』) 。最近、発表された民間団体のデータでは、ハシシを含むドラッグの愛好家数は「4000万から4500万人」(『カイロ及びギザたばこ業者協会』)との推計もでています。ほとんど人口の半分弱です。カイロ最大のハシシ取引地区サイイダ・ゼイナブに住んでいたときの私の実見でも、半数近くが吸っていました。
ハシシがこんなに蔓延している理由のひとつは、『コーラン』でその吸飲が禁止されていないことです。イスラム4大法学派の中でも、カイロで主流のハナフィー派ではとくに大目に見る傾向が強く、15世紀に同派法学者のジャマル・アッディーンが「許容」の法解釈を下しているぐらいです。ただ、同じイスラム教徒でも、より厳格なハンバル派の人たちは吸いません。同派を代表する14世紀の法学者イブン・タイミーヤはアルコールと同様に酩酊作用があるとして、「禁止」の法解釈を出しています。
しかし、ハシシ愛煙家は「カイロの喧噪にもまれたあとの一服は至福」だといいます。「安眠」「疲労回復」「性生活の改善」という目的もあります。結婚式などのお祝いの席では来客にふるまわれることもしばしばです。
カイロ大学のキャンパスや寮でも愛煙家をみかけました。「授業の前に集中力を高めるため」というのが学生の口実です。現代でも本気で取り締まりを強化したら、砂糖の暴動どころの騒ぎでは済みません。
実際、2011年のエジプト革命の火種はハシシという説もあります。その前年、エジプト内務省が「ハシシ取引の完全撲滅」を宣言しました。没収が相次ぎ、末端価格が高騰しました。さらには入手困難になり、愛煙家の不満が頂点に達するなか、フェイスブックにある動画がアップされます。
警官の一団が没収したハシシを独り占めにし、暴利をむさぼっていた実態を暴いたものでした。その様子を撮影したハーリド・サイードは警官の逆恨みをかい、ネットカフェにいたところを急襲され、無残に撲殺されてしまいます。
暴徒と化した警察は、サイードが息を引き取る前に、大量のハシシを彼の口の中に無理やり押し込んだと目撃者(ネットカフェのオーナー)が語っています。「ハシシの大量摂取による窒息死」(事件後の警察発表)にみせかけるためです。愛煙家にとって、他人事ではない事件です。権力に目をつけられたら、いつ何時、変死扱いされるかわかりません。
この事件の様子が別のフェイスブックにアップされ、革命運動への動員の発端となりました。庶民の楽しみを奪い取ろうとした権力側の腐敗、残虐性への怒りです。エジプト革命は一般には民主化運動といわれていますが、その広がりの根底にはハシシ愛煙家の存在もあったのです。
こうしたカイロの過激な一面をみると、さぞかし治安が悪い街なのだろうと想像されているかもしれません。しかし、そんなことはありません。靴紐をくすねるようなコソ泥はいても、人を傷つけたり、命を奪ったりするような凶悪犯罪は世界的に見ても少ないのがカイロです。
案外治安のいいカイロ
たとえば、カイロでの平均的な年間殺人件数は43件で、世界でもっとも安全な大都市といわれる東京の55件より少ないのです。世界の主要都市における人口10万人当たりの殺人死亡率も、東京に次いで最も少ないほどです(『UNODC(国連薬物・犯罪事務所)調査2000-2010』)。
日本人留学生が多く、治安がよいといわれているカナダのトロントでさえ、殺人死亡率はカイロの2倍。ロンドンで3倍、ソウルでは5倍です。近年治安がよくなったといわれるニューヨークでは10倍以上です。
つまり、東京並に安全な海外留学を望むならば、最もふさわしいのがカイロなのです。治安がよくて、しかも山積みする新興国の社会問題を現場で学べる。この2つの条件を満たす都市はカイロしかありません。
そのカイロの数ある社会問題の中でも、最たるものに住宅問題があります。すでに紹介しましたが、カイロの住宅の63%は違法建築です。その多くはいわゆるスラム街にあります。
スラムとは政府の許可なく勝手に占拠した居住地のことで、アラビア語では「アシュワイヤート」(無秩序な存在)と呼ばれています。
こうした地区はカイロに全部で14ほどあり、占拠する人口は1000万人超。人口の半数近くに及びます。カイロはただの大都市ではなく、世界を代表する巨大な「無法地帯」だったのです。
違法占拠ですから、そこでは当然、行政サービスは受けられません。水道も下水道も電気も公道も住民がみずから開発しています。警察はいませんが、自衛団はいます。高級マンションはありませんが、高層アパートならあります。規制は存在しませんから、合法地帯より広くて快適なアパートが安く借りられます。
(『“闘争と平和”の混乱 カイロ大学』より構成)
文/浅川 芳裕
参照元 : ベストタイムズ
2018/1/9(火) 12:03配信
エジプトの国民的麻薬「ハシシ」をご存知か。広く普及する背景と、カイロの社会的状況を新書『“闘争と平和”の混乱 カイロ大学』より紹介する。
ストレス解消法とは?
交渉術とはまた、話がそれますが。
ストレス解消にはもうひとつ人気の手段。それが、ハシシ(大麻)です。
ハシシは12世紀から800年も続くカイロっ子の嗜みであり、ささやかな楽しみです。
現在にいたるまで、歴代のカイロ統治者が取り締まりを試みましたが、だれもうまくいっていません古くはマムルーク朝のスードゥーン総督(アミール)が1376年、撲滅に乗り出しています。大麻畑を焼き払い、常習者の歯を引き抜く刑に処しました。その後の為政者も、栽培や流通の禁止、在庫の没収を繰り返しますが、庶民の反乱にあい断念しています。
エジプト政府の調査では、人口の約1割がハシシを含む麻薬を習慣にしています(2007年)。その倍の2割、1500万人が吸っているとする専門家の見解もあります(『米国PRI(国際公共放送)』) 。最近、発表された民間団体のデータでは、ハシシを含むドラッグの愛好家数は「4000万から4500万人」(『カイロ及びギザたばこ業者協会』)との推計もでています。ほとんど人口の半分弱です。カイロ最大のハシシ取引地区サイイダ・ゼイナブに住んでいたときの私の実見でも、半数近くが吸っていました。
ハシシがこんなに蔓延している理由のひとつは、『コーラン』でその吸飲が禁止されていないことです。イスラム4大法学派の中でも、カイロで主流のハナフィー派ではとくに大目に見る傾向が強く、15世紀に同派法学者のジャマル・アッディーンが「許容」の法解釈を下しているぐらいです。ただ、同じイスラム教徒でも、より厳格なハンバル派の人たちは吸いません。同派を代表する14世紀の法学者イブン・タイミーヤはアルコールと同様に酩酊作用があるとして、「禁止」の法解釈を出しています。
しかし、ハシシ愛煙家は「カイロの喧噪にもまれたあとの一服は至福」だといいます。「安眠」「疲労回復」「性生活の改善」という目的もあります。結婚式などのお祝いの席では来客にふるまわれることもしばしばです。
カイロ大学のキャンパスや寮でも愛煙家をみかけました。「授業の前に集中力を高めるため」というのが学生の口実です。現代でも本気で取り締まりを強化したら、砂糖の暴動どころの騒ぎでは済みません。
実際、2011年のエジプト革命の火種はハシシという説もあります。その前年、エジプト内務省が「ハシシ取引の完全撲滅」を宣言しました。没収が相次ぎ、末端価格が高騰しました。さらには入手困難になり、愛煙家の不満が頂点に達するなか、フェイスブックにある動画がアップされます。
警官の一団が没収したハシシを独り占めにし、暴利をむさぼっていた実態を暴いたものでした。その様子を撮影したハーリド・サイードは警官の逆恨みをかい、ネットカフェにいたところを急襲され、無残に撲殺されてしまいます。
暴徒と化した警察は、サイードが息を引き取る前に、大量のハシシを彼の口の中に無理やり押し込んだと目撃者(ネットカフェのオーナー)が語っています。「ハシシの大量摂取による窒息死」(事件後の警察発表)にみせかけるためです。愛煙家にとって、他人事ではない事件です。権力に目をつけられたら、いつ何時、変死扱いされるかわかりません。
この事件の様子が別のフェイスブックにアップされ、革命運動への動員の発端となりました。庶民の楽しみを奪い取ろうとした権力側の腐敗、残虐性への怒りです。エジプト革命は一般には民主化運動といわれていますが、その広がりの根底にはハシシ愛煙家の存在もあったのです。
こうしたカイロの過激な一面をみると、さぞかし治安が悪い街なのだろうと想像されているかもしれません。しかし、そんなことはありません。靴紐をくすねるようなコソ泥はいても、人を傷つけたり、命を奪ったりするような凶悪犯罪は世界的に見ても少ないのがカイロです。
案外治安のいいカイロ
たとえば、カイロでの平均的な年間殺人件数は43件で、世界でもっとも安全な大都市といわれる東京の55件より少ないのです。世界の主要都市における人口10万人当たりの殺人死亡率も、東京に次いで最も少ないほどです(『UNODC(国連薬物・犯罪事務所)調査2000-2010』)。
日本人留学生が多く、治安がよいといわれているカナダのトロントでさえ、殺人死亡率はカイロの2倍。ロンドンで3倍、ソウルでは5倍です。近年治安がよくなったといわれるニューヨークでは10倍以上です。
つまり、東京並に安全な海外留学を望むならば、最もふさわしいのがカイロなのです。治安がよくて、しかも山積みする新興国の社会問題を現場で学べる。この2つの条件を満たす都市はカイロしかありません。
そのカイロの数ある社会問題の中でも、最たるものに住宅問題があります。すでに紹介しましたが、カイロの住宅の63%は違法建築です。その多くはいわゆるスラム街にあります。
スラムとは政府の許可なく勝手に占拠した居住地のことで、アラビア語では「アシュワイヤート」(無秩序な存在)と呼ばれています。
こうした地区はカイロに全部で14ほどあり、占拠する人口は1000万人超。人口の半数近くに及びます。カイロはただの大都市ではなく、世界を代表する巨大な「無法地帯」だったのです。
違法占拠ですから、そこでは当然、行政サービスは受けられません。水道も下水道も電気も公道も住民がみずから開発しています。警察はいませんが、自衛団はいます。高級マンションはありませんが、高層アパートならあります。規制は存在しませんから、合法地帯より広くて快適なアパートが安く借りられます。
(『“闘争と平和”の混乱 カイロ大学』より構成)
文/浅川 芳裕
参照元 : ベストタイムズ
極限不眠症のあっしに「ハシシ」プリーズ! 身心もう限界!
— GeniusSawakiは日本人@只今Sydney (@sawakikasumi) 2018年1月10日
眠ろうとして眠れずに悶々ドロドロとしている時間が余りにも勿体無い!あっしには時間が無いのだ😫
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https://t.co/zQnB3IV4ih
— 高部正樹 (@takabemasaki) 2018年1月9日
これ、アフガンいた頃一杯あった。ハシシとガンジャ。ゲリラの多くがこれ吸ってたけど、ハイになればいいけどバッドに飛ぶと震え出したりしてまったく使えなくなる。戦闘前に吸うのもいたけど、バッドに飛ぶと後方に置いていくしかなかった。手を出さないのが一番。
まさにエジプトに行った時に出た結婚式にて勧められたけど、弱み握られてもかなんし断った。
— てる・むどう (@terumudo) 2018年1月9日
普通に根付いてるんよなー。
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エジプトの国民的麻薬「ハシシ」とは(BEST TIMES)https://t.co/HxLhsFNATe 大麻樹脂を高純度で精製した黒い粘土質のものだ。通常、煙管で吸引する。
— 🎌日本会議 新宿連合🎌 (@NipponkaigiSR) 2018年1月9日