<衆院選>食費1日800円程度…生活保護 なぜ切り下げ

12月5日(金)15時0分配信

◇大阪の受給者らが切り下げ取り消し求める訴訟準備

衆院選で安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の評価が焦点になる中、大阪の生活保護受給者らが、国と各自治体を相手取り、生活保護費切り下げの取り消しなどを求める行政訴訟を準備している。国は昨年、長引くデフレで物価が下がったことを理由に減額を決めたが、金融緩和で円安が進み、今は物価が上がっている。二重の苦しみを負う受給者らは「弱者の切り捨てだ」と声を上げる。

衆院選が公示された2日夕。74歳の無職男性が暮らす大阪府寝屋川市の築約50年の木造アパートは、室温が10度に下がった。節約のためストーブは使わず、毛布2枚でしのぐ。「ぜいたくしていないのに、なぜ切り下げるのか」。寒さと怒りで声が震えた。

古本店を経営していたが、客足が遠のき、8年前に店を畳んだ。4年前から生活保護を受ける。離婚して子どもはおらず、1人暮らしだ。保護費は月約11万7000円で、家賃を払うと手元に残るのは7万円弱。1日の食費は800円程度に抑え、入浴も週1回の銭湯だけだ。受給してから下着以外の服は買ったことがないという。

国は昨年8月、保護費のうち生活費に当たる「生活扶助」を減額した。来年4月まで段階的に引き下げ、男性も受給額が月2000円程度減る。円安で食料品の値上げが続き、増税の影響もあってやり繰りは苦しい。月末になると、20円のそばや100円のパック詰め白米などの格安品で空腹を紛らせる。

衆院選では、保護費の切り下げを巡る議論がほとんど出ていないと感じる。司法の場で窮状を訴えようと、原告になることを決めた。「議員定数削減も進んでいないのに、今回の総選挙は予算の無駄遣いと感じる。立場の弱い者から削るのは納得できない」

訴訟は今月19日、他の受給者約60人と共に大阪地裁に起こす。「憲法で保障された最低限度の生活を侵害された」と主張するつもりだ。弁護団によると、同様の訴訟は16道県で起こされており、原告は全国で500人以上になる見込みだ。

【服部陽】

◇13年度から3年間で670億円削減方針

生活保護の受給者は9月現在約216万人で、過去最低だった1995年の2.5倍に拡大している。国民の58人に1人が受給している計算で、生活保護費は年間約3.8兆円(このうち国費は約2.9兆円)に膨らんでいる。国は、保護費のうち生活扶助を2013年度から3年間で670億円(約6.5%)削減する方針で、家賃の実費を支給する「住宅扶助」などの見直しも進めている。

一方、円安による輸入価格の上昇などで、物価は昨年6月以降、上がり続けている。総務省が発表した今年10月の全国消費者物価指数では、昨年10月に比べて食料費が3.8%、光熱水費が4.8%上がった。

生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士は「国は生活保護を切り崩し、医療や年金など社会保障制度見直しの突破口にしようとしている」と指摘する。【服部陽】

参照元 : 毎日新聞


生活保護受給者は過去最高…暗躍する「不正受給指南グループ」を直撃

2014年12月5日 9時50分
 
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2014年9月時点で生活保護を受給しているが過去最多の161万2000万世帯、受給者数も過去最高の216万4909人を突破。支給総額は4兆円近くにのぼり、国家予算の約1割にもあたるという。「不正受給」も急増しており、近年、社会問題化しているのは周知の事実だ。

今回、筆者は、とある広域暴力団につながる人物から「裏生活保護受給マニュアル」を入手した。本稿ではそのエグ過ぎる内容を明かし、関係者の証言とともに不正受給の一端をリポートしたい。

不正受給の取り分は折半
「生活保護費削減、審査の厳格化などがあり、数年前よりは厳しくなってきているが、それでもまだまだおいしいシノギではある」

こう語るのは“裏マニュアル”をもとにシノギ(商売)を行っているグループのリーダー、金本公博氏(仮名・32歳)。彼はもともと広域暴力団がバックに控えるヤミ金および振り込め詐欺グループの一員だったが、4年ほど前から「生活保護ビジネス」に手を染めるようになった。

「生活保護費を全額没収して米だけ支給とかエグイ業者もあるけど、うちらはそこまでひどくない。まあ、優良業者だね(笑)。仮に受給額が10万円だとしたら、基本的にうちと受給者の間で5万円ずつ折半にしています。生かさず殺さず、ですわ」

客はどう集めているのか。

「うちの場合、金融もやってますから、その客に声をかけてます。あとは、ホームレスの連中に直接声をかける。警察に駆け込まれちゃマズいんで、無理やり強制するわけじゃないですよ。ソフトに提案するって感じです。”うちの寮においで。そのかわり、生活保護の手続きをしようね。その手伝いはするから”って。10人に声をかけたら3、4人は話にのってきますね」

狙い目は金持ちの集まるセレブな自治体
裏マニュアルを見ると、生活保護の申請から受給までまでの流れ、注意点、重要ポイントが実に細かく、生々しく記されている。

たとえば、住居の問題。生活保護の申請をするとケースワーカーと呼ばれる自治体の福祉課職員が自宅を訪ね、生活実態の調査を行うのだが、

「部屋をゴミ屋敷化すること」

「職員の訪問予定日前に部屋に生ゴミを放置しておき、異臭を漂わせておく」

などといった対策が記されている。

しかも、金本氏のグループでは住居のない者に受給しやすい部屋の提供まで行っている。

「かつてはアパートの部屋にに三段ベッドを何個も入れて、一部屋に十人とか二十人とかぶち込んでいたんですが、最近はお役所も厳しくなって、それでは通用しなくなった。うちの場合、ボロいアパートを一棟丸ごと借り上げて、一人一部屋。生活保護の場合、上限額の範囲内であれば家賃も全額出ますから、取りっぱぐれもありません」

生活保護受給希望の”客”に対しては、申請までの期間、セミナーと証する「特訓」も行っている。

「受給のサポートをするといっても、共産党とか宗教団体の連中みたいに申請者と一緒に区の窓口まで行ったりしません。リスクがデカいですからね。だから、事前にうちの若いのが福祉課窓口の担当役になって”想定問答”を繰り返し繰り返し、徹底的にやるんですよ。これが一番大変。基本的に自分でものを考えられないようなバカが多いんで(笑)」

この“想定問答”のマニュアルもあるが、今回は見せてもらえなかった。その理由はこうだ。

「うちの場合、支給認定基準がユルいといわれているいくつかの区に絞って申請させているんですが、区によっていろいろ対応の違いがあるんですよ。それに応じた想定問答集があるんですが、それを出しちゃうとバレちゃうんでね」

金本氏によれば、例外もあるが、大会社やお金持ちの多い、いわゆるセレブな街のある区ほど基準が緩いという。

支給日には区役所まで車で送迎。勝手に取りには行かせない
無事に生活保護の受給が認められたとして、その後の“集金”はどうしているのか?

「生活保護費は銀行振り込みが可能な場合もありますが、うちの場合、必ず窓口に取りに行かせてます」

裏マニュアルにはこんな一節がある。

「支給日は必ずこちらの人間が車で区役所まで送迎します。勝手に取りに行かないこと」

そして最後の結びにはこうある。

「(金本氏グループの)担当者の指示をよく守って自らの生活を防衛しましょう」

無料で振る舞われる炊き込みご飯
金本氏の“客”にも話を聞くことができた。S氏(54歳・独身)は5年前まで某大手ゼネコンに勤務していた元サラリーマンだがFX取引にはまり多重債務者となり、最後は金本氏の餌食となった。都内の某公園で話を聞いた。

「私の場合、合計支給額は約11万円。うち生活扶助が7万円ちょっと。住宅扶助が3万円ほど。そのうち半分は取られちゃうんですが、それでもやっぱり毎月はじめの支給日は楽しみでね。カネのない生活でストレスがたまってますから、一日か二日で使っちゃいます。競輪行ったり、飲みに行ったりで(笑)。その後の生活? 金本さんが仕事くれるんですよ。それが毎月6万円ほど。仕事の内容ですか? それは口止めされてるんで、すみません」

ちなみに都内某区の生活保護の窓口のカウンターには、保護費を使いきってしまった受給者用に、ビニール袋に入った炊き込みご飯やスナック菓子が毎日置かれている。窓口で保護証明書さえ見せれば、タダでもらうことができるという。S氏は苦々しげに言った。

「まるで餌ですよ。人間扱いしてない証拠ですね。毎月“給料”くれるんだから、文句は言いたくないけどね」 

財政破綻、年金制度崩壊、少子高齢化……さまざまな難問山積みのニッポンにおいて、限られた財源の有効活用は至上命題だ。だが現場を見る限り、一筋縄ではいかなそうだ。

(取材・文/小林靖樹)

参照元 :
DMMニュース