ネタニヤフ・イスラエル首相 逆境 汚職疑惑で事情聴取

2018年3月5日

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【エルサレム高橋宗男】イスラエルのネタニヤフ首相の足元が揺らいでいる。イスラエル警察は2日、国内通信最大手企業との汚職疑惑を巡り、首相から事情聴取した。2月には別の2件の汚職疑惑で首相を収賄や詐欺、背任の罪で起訴するよう勧告している。今後の司法手続きや捜査の進展を受け、首相への辞任圧力が高まる可能性もある。

地元メディアによると、2日の事情聴取はエルサレムの首相公邸で行われ、約5時間にわたった。ネタニヤフ夫妻がこの企業の運営するニュースウェブサイトで自身に好意的な報道をするよう求め、見返りとしてこの企業に有利な規制緩和を通信省に指示したとみて捜査している。ネタニヤフ氏がこの疑惑で聴取されたのは初めて。

警察が起訴勧告したうちの1件は、ネタニヤフ氏が米ハリウッドの大物映画プロデューサーらからシャンパンや葉巻、貴金属など100万シェケル(約3000万円)以上に相当する品物を受け取ったとの疑惑。ネタニヤフ氏は調べに「友情の証しの贈り物」として賄賂性を否定。警察は、在外イスラエル人が国内に戻る際の税金を軽減する法制化を推し進めようとしたと指摘し、贈収賄の関係にあると強調している。

もう1件は、ネタニヤフ氏に批判的な論調のイスラエル有力紙イディオト・アハロノトの発行人に、便宜を図る見返りに首相に好意的な報道を求めたとするものだ。ネタニヤフ氏はフリーペーパーであるライバル紙の発行部数を抑制すると持ちかけたとされる。

起訴勧告された2件は検察が証拠を吟味し、ネタニヤフ氏の弁護団に提示。その後の聴聞会で、ネタニヤフ氏側に反論の機会が与えられる。司法長官はこれらの手続きを踏まえて起訴の可否を決定するが長期化は必至だ。

イスラエルでは、オルメルト前首相が2008年に複数の汚職疑惑の捜査が進む中で辞任を表明した。オルメルト氏はその後、エルサレム市長時代の贈収賄事件で有罪判決を受け、1年4カ月収監された。

首相は警察の起訴勧告の対象となったり、違法行為で起訴されたりしても、辞任する義務はない。ネタニヤフ氏は疑惑を否定。「責任を持って誠実に国を率いていく」と強調した。

2月下旬にイスラエルのテレビ局が実施した世論調査では、選挙が実施される場合、与党リクードは現有議席数から2議席減の28議席を獲得し、第1党を保つとの結果が出た。現状では国民からの逆風はさほど強まってはいない。

参照元 : 毎日新聞


イスラエル警察 ネタニヤフ氏起訴勧告 収賄・詐欺罪など

2018年2月15日

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【エルサレム高橋宗男】イスラエル警察は13日、2件の汚職疑惑を巡り、ネタニヤフ首相を収賄や詐欺、背任の罪で起訴するよう勧告した。正式起訴に踏み切るかどうかの判断は司法長官に委ねられる。長官の方針が決まるまで数週間から数カ月かかる見通し。

ネタニヤフ氏は疑惑を否定し、辞任の意向はないと強調している。

警察の声明によると、ネタニヤフ氏は米ハリウッドの大物映画プロデューサーやオーストラリアの富豪からシャンパンや葉巻、貴金属など100万シェケル(約3000万円)以上に相当する高額な贈り物を受け取った。また、イスラエル有力紙イディオト・アハロノトの発行人に対して、便宜を図る見返りに首相に好意的な報道を求めた。

ネタニヤフ氏は13日、国民向けの声明をテレビで発表し、「いずれ真実は明らかになる」と強調。引き続き首相として国を率いていく考えを示した。イスラエルでは、首相が警察の起訴勧告の対象となったり、違法行為で正式起訴されたりした場合でも、辞任の義務はない。

参照元 : 毎日新聞


イスラエル アフリカ移民を追放 政府方針 「建国理念に反する」の声

2018年2月20日

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イスラエル政府がアフリカからの亡命希望者の国外退去方針を示し、ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)の生存者らが反対している。イスラエルは迫害されたユダヤ人の安住の地として建国された経緯があるからだ。世論調査では国民の約3分の2が退去支持だが、「建国の理念に反する」との声も根強い。【エルサレム高橋宗男】

「不法移民を滞在させる義務はない。第三国に送る」。イスラエルのネタニヤフ首相は1月28日の定例閣議でこう述べた。首相はアフリカからの亡命希望者らを「侵入者」と呼ぶ。より良い経済状況を求め違法入国した「経済移民」とみなし、保護が必要な「難民」とは認めない。

内務省によると、アフリカ出身の成人亡命希望者は約3万8000人。独裁体制下のエリトリアからが7割、強権政治が続くスーダンからが2割だ。

政府方針では、亡命希望者のうち2万人の独身男性に国外退去か無期限拘置を選ばせる。退去を望めば航空運賃を負担し3500ドル(約37万円)を支給。方針通知は今月3日に始まり、2カ月以内に判断する必要がある。

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イスラエルは国連難民条約に加盟し、亡命希望者を生命の危険がある本国には送還できない。このため「アフリカの第三国」に退去させる計画だが、受け入れ先として地元メディアは「ルワンダかウガンダ」と報道。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、イスラエル政府はこれまでも航空運賃の負担をすることで移民の自発的出国を促しており、ルワンダ、ウガンダ両国には2013〜17年で、すでに約4000人が移動したとみられる。UNHCRは新退去制度に懸念を表明。自発的出国をした移民も安全ではなく、イスラエルは難民や保護が必要な人々を守る国際的義務があると指摘する。

「ルワンダに送られるぐらいならイスラエルでの拘置生活を選ぶ」。エリトリア人のベルハネ・ナガシさん(32)は言う。恣意(しい)的な逮捕や処刑が横行する母国を02年に離れた。スーダン、リビア、エジプト経由でイスラエルにたどり着いたのは06年。「密入国業者の指示に従っただけ」。移動中に命を落とした仲間もいる。エルサレムで料理人として働くが「白人移民も多いのにアフリカ人ばかり問題視される」と言う。

独立系研究機関「イスラエル民主主義研究所」が今月発表した世論調査によると、退去方針を「強く支持する」「支持する」回答は合計66%に達した。

だが、ホロコーストの生存者36人は1月、国外退去中止の嘆願書を政府に提出。その一人でエルサレムに住むハイム・ロットさん(85)は「歴史から学ぶべきだ」と強調する。11歳の時にオランダでキリスト教徒にかくまわれ生き延びたロットさんは「世界中の人たちに迫害が起きてはいけない」と訴える。

ベロニカ・コウヘンさん(73)は「ホロコーストの生存者というより、人間として反対する。私たちの支持者は多い」と話す。作家や学者、医者らも政府を批判し、「国外退去の航空機の操縦を拒否する」と言うパイロットも出ている。

参照元 : 毎日新聞