「ネット弁慶卒業してきた」「足つって自首」IT講師殺害の42歳男 異様な逆恨み犯行声明“全文公開”

2018.6.25 14:38

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昨日、6月24日夜、福岡市中央区大名の旧大名小学校内で東京のインターネットセキュリティー関連会社の岡本顕一郎さん(41)が刺殺された。福岡県警は翌日、殺人と銃刀法違反の疑いで福岡市東区の無職、松本英光容疑者(42)を逮捕した。

しかし、2人にはまったく面識がなかった。警察の調べに対し、松本容疑者は、「ネット上のやりとりで、恨んでいたので、殺そうと思った」などと供述している。

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凄惨な事件が起こったのは、24日夜8時ごろ。

旧校舎を活用した創業支援施設「福岡グロースネクスト」で講演会の講師として来ていた岡本さんを1階トイレで松本容疑者が待ち伏せし、刃渡り16.5cmの包丁で刺した。

「岡本さんは首や胸、腕などかなりの数、刺されていた。現場はまさに血の海状態で、ほぼ即死状態」(捜査関係者)

福岡県警は緊急配備で、容疑者を追った。すると、24日深夜になって「松本容疑者が血のついた包丁を持って、交番に出頭。『自分が刺して殺した』と申し出たため、緊急逮捕した。人を殺したとは思えない、淡々とした様子だったそうだ」(前出・捜査関係者)

松本容疑者はなぜ、面識のない岡本さんを狙ったのか。岡本さんはインターネット上でハンドルネーム、「Hagex(ハゲックス)」でブログを執筆し、ネット界では知られる存在。岡本さんはインターネットから、日々のトピックを拾い出して独自の視点で伝えるブログが人気だった。

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「松本容疑者は、面識がない岡本さんにネット上で馬鹿にされたと思い込んで、福岡のセミナーに来ることを知り、殺そうと思ったと動機を語っている。岡本さんから『ネット弁慶』と指摘されたことに腹が立ったと語っている」(前出・捜査関係者)

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「ネット弁慶」とは、インターネットでは、威勢のいい、強気な話を書き込むが、実際の日常生活ではその逆で、小心者、気弱な人間という意味だ。

松本容疑者は、交番に出頭直前、SNSに「犯行声明」ともいえる内容を24日夜10時29分に書き込み、投稿していた。

声明は<おいネット弁慶卒業してきたぞ>という書き出しで始まる。

<俺を「低能先生です」の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ>と殺害の動機とも思える内容を書き込んでいる。

さらなる「襲撃」計画をほのめかす記述もあった。

<事前の予定では東京までいってはてな本社にこんにちはするつもりだったが、もう無理足つってるし>

しかし、断念したようだ。

「松本容疑者は調べに対し、目的を遂げることができたなどと語っている。長く引きこもりでネットに依存した生活でそこで馬鹿にされたのを根に持ち、犯行に及んだようだ。ネットの犯行声明は、年齢も42歳となっており、書いている内容と松本容疑者の供述は合致しており、本人が書いたものとみられる」(前出・捜査関係者)

岡本さんはHagex名で5月2日、〈低能先生という荒しがいる。はてなブックマークに出現し、IDコール利用して複数のユーザーに対して誹謗中傷を繰り返している。当然、すぐにアカウントが凍結されるのだが、新規のアカウントを作り罵詈雑言を行っている。彼は「低能先生」と呼ばれ、最低でも2016年ごろから活動しており、以下のページは低能先生が利用したアカウントがまとめられている。私も低能先生に、お下劣な言葉を定期的に投げかけられているのだが、昨日は凄かった。なんと1日に7回も低能コールがきた〉などと困惑し、書き込んでいた。

ネットに投稿された「犯行声明」の全文は以下の通りだ。

<おいネット弁慶卒業してきたぞ 改めて言おう
これが、どれだけ叩かれてもネットリンチをやめることがなく、俺と議論しておのれらの正当性を示すこともなく(まあネットリンチの正当化なんて無理だけどな)俺を「低能先生です」の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ 「予想通りの展開だ」そう言うのが、俺を知る全ネットユーザーの責任だからな? 「こんなことになるとは思わなかった」なんてほざくなよ? ただほぼ引きこもりの42歳はここで体力が尽きてしもうた 事前の予定では東京までいってはてな本社にこんにちはするつもりだったが、もう無理 足つってるし なんだかんだ言ってはてなというか増田が俺をネット弁慶のままで食い止めていた面もあるしなあ 逆に言うと散々ガス抜きさせてもらった恩がある はてブと通報厨には恩など欠片もないが てことでこれから近所の交番に自首して俺自身の責任をとってくるわ 足つってるから着くまで30分くらいかかるかも>

(今西憲之)

※記事中で松本英光容疑者の住所を福岡市中央区と記しておりましたが、東区の間違いでした。お詫びし、訂正いたします。

参照元 : 週刊朝日


福岡刺殺、ネット社会のリスク浮き彫りに 居場所の特定も…書き込みが事件に発展、後絶たず

2018年06月26日 06時00分

福岡市中央区の創業支援施設で有名ブロガーでもあった男性会社員が刺殺された事件は、インターネット上のトラブルが引き金になったとみられている。ネット上の書き込みが事件に発展するケースは後を絶たず、ネット社会に潜むリスクや問題点が改めて浮き彫りになっている。

2008年6月、東京・秋葉原で17人が無差別に殺傷された事件は、犯行動機について「没頭していたネット掲示板で受けた嫌がらせに怒って犯行に及んだ」と認定された。同年4月、千葉県柏市で中3男子が17歳少年にバットで殴られて重傷を負った事件は、匿名の自己紹介サイト「プロフ」の書き込みを巡って少年が一方的に恨みを募らせたことが要因で、2人は初対面だった。

ITジャーナリストの三上洋さんは「ネットの世界は匿名性もあって発言がエスカレートしやすい。現実世界では出会わない人への憎悪が増す場所にもなり得る」と指摘。今回の事件については「逆恨みではないか」との見方を示した上で「ネット上のやりとりでは一方が正義感から書き込んだことも、相手にとってはリンチされているように思い込み、今回のような犯行に結び付いてしまう恐れがある」と話した。

ネット上の投稿を見た千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「被害者は容疑者に対し、殺人に結び付くほどのひどい発言や中傷はしていない。ネットリスクというよりも、容疑者がどういう心情で犯行に至ったのかを解明すべきだ」と話す。容疑者は2年ほど前から、ネット上でアカウントを変えながら暴言を書き込んでいたとみられており「このような書き込みが犯罪として認定されず、続けられていることにも問題がある」と言う。

ネット社会がはらむ危険性として、藤川教授は「居場所が特定されやすい」という点を指摘。被害者は自身が主催するセミナーの場所と日時をネットで公表しており、近年増加するアイドルへのストーカー事件でもネット上の情報を基に居場所が特定されたケースが多いことを挙げた。

ネット上の書き込みを巡っては、神奈川県の東名高速道路で起きたあおり運転に絡む追突死亡事故で、誤った情報を拡散させたとして福岡県警が男11人を名誉毀損(きそん)容疑で書類送検した事件もあった。藤川教授は「ネット上では自分の力が強くなっているという誤解、ゆがみが起きる。内容によっては刑罰の対象にもなるという認識を広げることも必要だ」と話した。

=2018/06/26付 西日本新聞朝刊=

参照元 : AERA dot.