元経済ヤクザが暴く仮想通貨バブルの正体と「真・仮想通貨投資術」

2018年3月7日

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「ビットコインはもう…」

狂乱の続く「仮想通貨相場」。80年代バブルで修羅場をくぐり、新興株・ITバブルをはじめ多くのバブルを経験してきた猫組長氏が、仮想通貨バブル時代の投資術を説く。新著『アンダー・プロトコル』で自らの「経済活動史」をすべて記した元経済ヤクザが見抜く、驚くべき仮想通貨の未来とは――。

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80年代バブルとの共通点
2018年1月16日、仮想通貨取引所「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨「NEM」(ネム)が不正流出する事件が発生した。

コインチェック社は消費者補償を約束したものの、2月27日に政府は「仮想通貨交換事業者から返金を受けた場合は課税所得になりうる」と閣議決定。さらに同日、140人の顧客が総額4億円相当の返還を求めて東京地裁にコインチェック社を提訴するなど騒動が終息する気配はない。

また「仮想通貨」のトピックとして忘れてはならないのがビットコインの大暴落だ。昨年12月には1ビットコインが1万8000ドル(約190万円)に迫っていたが、1月に入り1万ドル(約100万円)を切る。時価総額でみると昨年12月に3271億ドル(約35.8兆円)あったビットコインの時価総額は、2月に入ると1618億ドル(約17.7兆円)と半分以下になった。

いまや連日話題となる「仮想通貨」。だが、その誕生の背景には深刻な国際政治の問題が関係している。鍵になったのがロシアの存在だ。

01年に起こった9.11テロ以降、テロ資金摘発を目的として国際標準の送金方法を監視、支配しているのはアメリカである。14年のクリミア危機でロシアは金融制裁対象になり、これに伴ってロシアの銀行はVISAやMASTERなどのクレジットカードすら扱えなくなった。

金融戦争で苦汁を舐めているロシアは、アメリカの金融支配の中に入らない、新たな金融システムを模索。そこで開発されたのが仮想通貨の基本となるブロックチェーン技術である。

ブロックチェーンは「分散型台帳」と訳されるが、複数の場所に同じ情報を保管するという仕組み。技術的な解説は割愛するが一般のインターネット回線を使い、高い匿名性を維持しながら事実上改ざんが不可能な、極めて高速な資金移動を可能にしたのである。ロシアと同様の思惑を持った各国も追従しているが、当然のことながら、この動きにアメリカは敵対している。

金融(ファイナンス)技術(テクノロジー)すなわち「フィンテック」と、情報技術の融合によって生み出された「仮想通貨」。NEMやビットコインなどのニュースを聞いて誤解している人が多いのだが、仮想通貨には2つのタイプがある。1つが、NEM、ビットコインなどのように投機性の高いもの。もう1つが、決済システムとして、中央銀行や民間銀行などが開発しているものである。

「13年初頭に約11万円、1000ドルのビットコインを購入していて、一切売却を行っていなかったら、約1億3500万円になる」

こんな言葉に吸い寄せられたOL、主婦、学生までもが投機に参加した。株、土地に限らずあらゆるバブルの最終局面には共通の特徴がある。驚くべき速度で売買される合計金額が上がっていくのだ。

その理由は、それまで見ていただけの一般投資家が参加してくるという単純なもの。私が経験した80年代バブルの最終局面がまさにこれで、不動産、株が競うように最高値を更新して収拾が付かない状態になっていた。

敏感な人はいち早くそこから抜け出したが、それを続伸のサインと見た人はバブルの崩壊とともに沈んでいった。当時は私も沈んだ1人だったのだが……。

「投資対象としてのビットコインはもう終焉した」

そう判断した私は、昨年11月にビットコインから手を引いている。

「子供銀行券」をどれだけ手に入れたところで
投機性の高い仮想通貨は、「誰が使ったのか」や発行主体が何を担保にしているのかが明確ではない。そこで過去の取引履歴のデータの整合性を取りながら 取引の承認・確認作業を行う。この作業は採掘を意味する「マイニング」(mining)と呼ばれている。

一方で、銀行などが発行する仮想通貨は決済用の仕組みであるばかりか、発行主体が何を担保にしているのかが明確ということで、必ずしもマイニングを必要としていない。

すなわち投機対象としての仮想通貨は、出所不明で、発行主体もなく、裏付け資産もない。「富」を担保するものは存在せず「価値があるかも知れない」という幻想が価格を高騰させてきたということである。

ビットコインバブルによって「億」を儲けた人たちはTwitter などでその成功談を自ら発信し、マスコミから「億り人」ともてはやされた。しかし「億り人」たちが群れ集まっているのは、実は「子供銀行券」となんら変わらない通貨もどきの何かだったのだ。

ブロックチェーン技術とマイニングといった仮想通貨発行の技術はほぼ完成しているということで、毎日のように新しい「子供銀行券」が生まれている。自分で発行して価格操作もできる投機対象――にもかかわらず、14年の国会の答弁書によれば仮想通貨は「通貨・法貨」「有価証券」に該当しないというのが政府見解だ。

つまり仮想通貨投機でインサイダーはやり放題ということになる。この種の金の匂いに敏感なのはもちろんアンダーグラウンドの住人で、最先端の一握りの暴力団員にとって「仮想通貨投機」は笑いの止まらないビジネスとなっている。

それでも仮想通貨に投資するのなら
アメリカの四大銀行の一つJPモルガン・チェースのCEO(最高経営責任者)のジェームズ・ダイモン氏は、昨年9月に開かれた投資家会議でビットコインを、「詐欺であり、崩壊する」と痛烈に批判しているが、そもそもビットコインを「通貨」と称していることが間違いだと私は考えている。

通貨には「価値の保存」「価値の交換」「価値の基準」という3つの機能が必要だが、これを満たすにはビットコインはボラティリティ(資産価格の変動の激しさを表すパラメータ)が高すぎるのだ。朝100円だったコーヒーが夕方には1万円になっているようなハイパーインフレ国の通貨と同様に、「価値の保存」能力が欠落していると言えるだろう。

ビットコインを実際に決済手段として使用できるインターネットサイトがあるにはあるが、ごく一部。ボラティリティの高さから取り扱いをやめる代理店も増えていて、「価値の交換」の普及は進まない。ボラティリティの高さは同時に「価値の基準」の設定を困難にしている。

ビットコインバブルが崩壊し、投機用仮想通貨のからくりも明らかになった局面で、正常な人が行う投資は何か?

投資とは資本からゲイン(儲け)を得なければならないのだから、ゲインを得る可能性の合理的追求である。「儲かるかも知れない」というレベルで資本を投下するのは投資ではなく投機、いやギャンブルである。「ほぼ儲かる」というレベル以上でなければ、投資とは言えない。

バブルで沈んだ私は筋の悪いところから莫大な借金をすることになった。その時、返済としてヤクザ組織に差し出した投資材こそ「自分」である。すでに金融スキルを持っていたと思い込んでいた私だが、親分から最初に言われた一言はそれを最も良く表している。

「素人は怖いもの知らないのぉ。わしはそこの社長と話してからやないと、株買わんぞ。最後はそこに責任取らすからの」

ここには暴力と人脈に支えられた確実なゲインがある。このレベルがプロなのだ。

先ほどの疑問の答えはすでに出ている。仮想通貨に“投資”をするのであれば、「子供銀行券」の売買ではなくブロックチェーン関連だ。

ブロックチェーンこそが、国際金融の動きを独占して把握するアメリカへのアンチテーゼであり、その関与を逃れた新たな経済圏を形成するための「萌芽」なのだから。

参照元 : 現代ビジネス