北朝鮮ミサイル恐れ核シェルター需要UP…人気のエアコン型280万円

2017/8/31(木) 7:04配信

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29日早朝に首都平壌から弾道ミサイルが発射されて北海道上空を飛行し太平洋上に落下するなど、北朝鮮で核兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射訓練が進む中、「核シェルター」の需要が増している。

日本では、自宅の部屋を“シェルター化”できる空気濾過(ろか)装置の販売会社や、地下核シェルターの施工会社に問い合わせが殺到。米国製のシェルターを輸入する動きもみられるほか、米国内での需要も拡大しており、日米でブームが起きている。

今年に入って急激にミサイル実験の回数を増やしている北朝鮮。29日に発射された「火星12」も核弾頭の搭載が可能と主張している中、万一の時のために自らの身を守ろうと、核シェルターの需要が高まっている。

放射能をはじめとした大気中の有害物質を濾過する装置を扱う大阪府の「株式会社シェルター」の西本誠一郎社長は「昨年までは資料請求が一年に10〜15件だったのが、今年はすでに800件。3月くらいから急激に増えています」。2001年の米同時多発テロ時など、世界的に緊張が高まった際には一時的に問い合わせが増えることがあったが、現在は当時とは比べものにならないほどの数という。

同社では避難部屋を新たに造るのではなく、エアコン型の装置を部屋に取り付け、有事の際には目張りをして密閉し、その部屋をシェルター化するという形式が主流。“売れ筋”は、6〜8畳用で280万円するイスラエル製装置だ。

また、地下室のシェルターの設計、施工などを行う神戸市の「織部精機」は「元々の売り上げが少ないということはありますが、昨年と比べて26倍です」と話した。オーダーメイドで造るため金額に幅はあるが、「通常の家庭用で、目安として(建造費は)2500万円とお伝えしています」。ただ、注文から完成まで4か月半かかることから「まず空気の濾過装置を購入して家に取り付け、地下室が完成したら装置を移すことをお薦めしています」とした。

一方、ICBMの高性能化により照準となる米本土でも「シェルター特需」は起きている。カリフォルニア州にあるアトラス・サバイバル社は「問い合わせの電話が殺到している。1960年代に戻ったかのようだ」。冷戦終結後、いったんは閉業したが、最近の需要拡大で復活した。

今年は1000基の販売を見込むが、「今、最も需要があるのは日本だ」として大阪に販売拠点を設置。テキサス州のライジング・エス社は今年、既に67基のシェルターを輸出したが、その多くが日本向けだという。ちなみに、同社で最も人気なのは広さ約46平方メートルの家族用で、価格は12万ドル(約1320万円)という。

参照元 : スポーツ報知


「家庭用核シェルター」国内事情 海外より薄い存在感、北ミサイルで一気に注目


2017-06-13 08:50:01

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毎週のようにミサイル発射を繰り返し、暴走を続ける北朝鮮の核兵器使用の恐怖が現実味を帯びる中、ある“商品”に注目が集まっている。放射性物質から身を守るとされる「家庭用核シェルター」だ。1台約280万円するが、大阪の販売会社では今年早くも、過去55年の販売量に匹敵する10台も売れたという。シェルターは欧米では当たり前だが、唯一の被爆国であるにもかかわらず核や紛争への危機意識が著しく低い日本では長らく普及しなかった。ただ相次ぐテロや北朝鮮の動向など混迷を深める国際情勢とともに、ようやく必要性が認識され始めたようだ。「愛の遺産」「万が一への備え」。関係者がこう訴えるシェルターとは、どんなものなのか。(細田裕也)

大阪府羽曳野市の住宅地に、55年前から核シェルターの販売を手がける会社がある。その名も「シェルター」だ。「最近のものはコンクリート製に切り替わっている。これが耐爆(たいばく)扉です」。同社の地下1階。西本誠一郎社長(80)が鉄製の扉を開けると、奥にもう1枚の扉が姿を現した。これが爆風や熱を防ぐという。西本社長は「この二重構造により、3キロ圏内で爆発が起きても耐えられる」と説明する。

その先にあるのが、地下シェルターの「モデルルーム」。このルーム内に、放射性物質を吸着・除去できるとされる空気清浄機、いわゆる「家庭用核シェルター」があった。西本社長は「核シェルターといえば、多くの人は地下にあるものと思っているが、(空気の)濾過(ろか)装置がなければ、そこは地下でもシェルター機能は果たさない。つまり、普通のマンションの一室でも、装置をつければその日からシェルターになる」と語る。

家庭用核シェルターの中でも、西本社長が主力商品と位置づけるのが、イスラエル製の「レインボー36」。高さ41センチ、幅68センチ、奥行き22センチで白色のボディーで、見た目はまるでエアコンだ。吸気口と排気口があり、設置するだけで室内の気圧が上がり、建造物の隙間から有害物質が入りにくくなる。製造会社の説明では、放射性物質と細菌、毒ガスを99%除去することが可能だという。価格は約280万円で部屋の大きさによって前後する。取り付け工事は半日ほどで終わる。

「(北朝鮮は)サリンを弾頭につけて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」。4月13日の参院委員会で安倍晋三首相がこう答弁すると、シェルターへの資料請求が急増したという。この直前には、内戦下のシリアで猛毒サリンとみられる化学兵器が使用された。子供が被害に遭うなど、ショッキングな映像はまたたく間に世界を駆け巡った。

創業以来、55年間でわずか10台しか売れなかったという家庭用核シェルターは、今年3、4月だけで10台も売れた。5月以降、問い合わせは少し落ち着いたというが、それでも1日数十件の電話が入る。個人宅への設置をめぐり、大手住宅メーカーからも問い合わせを受けた。

西本社長は熱心なクリスチャン。聖書にある「終末論」を信じ、核シェルターの販売を手がけるようになった。西本社長はシェルターを「愛の遺産」と呼び、危機的状況から家族を守るために、必要な存在だと説く。「鳴かず飛ばずの時代は長かった。『こんなもの売って何になるんだ』と、人に笑われたこともある。だが予期せぬことは、いつ起きるか分からないということ。今まで(販売を)続けてきてよかったと思う」

日本国内では核シェルターの存在感は薄く、これまで普及してこなかった。NPO法人「日本核シェルター協会」(神戸市)によると、全人口に対し何%の国民を収容できるシェルターがあるかを示す「人口当たり普及率」では、スイス、イスラエルの100%に対し、日本はわずか0・02%にとどまる。ノルウェーは98%、米国は82%であることから、いかに日本で核シェルターが存在しないかが分かる。平成14年時点のやや古い調査ではあるが、織部信子理事長は「この傾向は今も変わらない」と指摘する。

織部理事長によると、スイスなどでは、公共のシェルターが各地にあるだけでなく、住宅新築時のシェルター設置が義務づけられており、高い普及率の要因になっている。さらに中国や韓国でも、新しいビルを作る際は地下空間を設け、シェルターを作る動きが広がっており、シェルター設置は各国で「常識」になりつつある。頑丈な構造に加え、食料なども備蓄していることから、自然災害時にも応用が考えられる。

唯一の被爆国として核兵器の恐怖を身をもって体験していながら、公共・家庭用のいずれのシェルターも普及していない日本。織部理事長はその背景に、戦後の日本人特有の意識がかかわっているとみている。「核シェルターを普及させようとすると、『軍国主義だ』と批判を浴びることもあった。一時期は『核』という言葉を安易に口にしてはいけない雰囲気もただよっていた。平和が大切であることは理解できるのだが…」と織部理事長。「できるなら核兵器はない方がいい。でも存在する以上、万が一に対する対策を取ることは、当然のことだと思う」と訴え、国民意識の変化に期待を寄せた。

本格的な核シェルターの普及にあたっては、有事の際、逃げ込んだシェルター内で誰がリーダーになるかを決めておくことや、当然、放射性物質への正しい知識も必須だ。織部理事長は「せっかく日本で公共シェルターができたとしても、今の日本人ではそれをどう使っていいのか分からないというのが実情ではないか。シェルターの普及とともに、いざというときに、シェルターをどう使うかを学ぶ必要がある」と話している。

参照元 : 産経新聞