わずか1カ月のルームシェアの末の「我慢の限界」 高校の親友刺し殺した居候男の殺意の着火点

2017/6/20(火) 10:06配信

2017-06-20_211744

「我慢の限界が来て殺した」。6月6日早朝、警視庁八王子署に自首してきた男はそう声を絞り出した。東京都八王子市内の民家で会社員の古田賢司さん(27)を包丁で刺して殺害したとして、殺人容疑で緊急逮捕されたのは、同居する無職の本田拓也容疑者(28)。2人は高校の同級生で、本田容疑者は「親友」の新居に居候していた。しかし、5月に始まったばかりの同居生活ではけんかが絶えず、たびたび警察沙汰に。けんかの原因は、かばんの貸し借りなどささいなものだったという。

■「家を見ないように」

2人が暮らしていたのは、JR八王子駅から北に1・5キロほど離れた住宅街の一角にある、一戸建ての賃貸住宅。5月初旬に入居したとみられ、賃貸契約書の名義人は殺害された古田さんだった。

近くに住む主婦(46)によると、2人は軽乗用車で荷物を運び入れるなど、業者を使わずに引っ越しをしている様子だったが、近隣へのあいさつなどはなかったという。

男同士の同居生活はすさんでいた。引っ越し後しばらくは、玄関脇の駐車場に冷蔵庫が置きっぱなしのまま。道路に面した1階の窓にはカーテンをつけず、日中も雨戸を下ろしていた。本田容疑者が大きなごみ袋に洗濯物を入れ、タクシーで外出する姿も目撃されており、前出の主婦は「仕事をしているような感じもないし、子供たちにも家をじろじろ見ないように注意していた」と打ち明ける。

■連日の大げんかの果てに

近隣住民の不安が現実になったのは、5月29日の夜。言い争う男たちの怒鳴り声が家の外にまで響き、パトカーや救急車が駆けつける騒ぎになった。いったんは収まったかにみえたが、週末の6月2〜4日には連日警察沙汰のけんかが続き、別の50代女性も「またか」とうんざりするほどだったという。

捜査関係者によると、けんかの原因は「かばんを貸してくれなかった」といったささいなものばかり。110番通報するのは決まって本田容疑者の方で、事件前日の5日午前8時ごろにも、本田容疑者が「顔を殴られた」と通報していた。

このときは本田容疑者も古田さんを殴っており、結局被害届は出さずじまいだったが、翌日にはついに一線を越えてしまった。

「人を刺してしまった」と自首してきた本田容疑者の案内で自宅に入った署員が目にしたのは、1階の寝室で、血まみれになって布団の上に倒れている古田さんの姿。救急隊も駆けつけたが、その場で死亡が確認された。遺体は首や腹などの複数カ所に刃物による傷があり、付近から凶器とみられる包丁も発見。犯行時にもみ合いになったのか、本田容疑者も手を切るけがを負っていた。

本田容疑者は逮捕直後の調べに、2人の関係を「親友だった」とする一方、「(古田さんから)暴行を受けていた。我慢の限界だった」とも話したという。現在は黙秘を続けており、殺害につながるような動機は明らかになっていない。捜査関係者は「殺人事件になるほどのトラブルがあったとは思えない」と首をかしげる。

十年来の友情は、わずか1カ月の同居生活で最悪の結末を迎えてしまった。

参照元 : 産経新聞