<共謀罪>与党が19日に採決 衆院法務委員会

2017/5/18(木) 20:16配信

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「共謀罪」の成立要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、与党は19日の衆院法務委員会で採決に踏み切る。自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決される見通しで、23日の衆院本会議での可決を目指す。これに対し、民進党など野党は反発しており、採決は混乱が予想される。

民進党など野党4党が提出した金田勝年法相の不信任決議案は、18日の衆院本会議で自民、公明、維新3党の反対多数で否決された。

与党側は19日の法務委で4時間の質疑を行い、質疑時間が目安とする30時間(参考人質疑を除く)に達することから、採決に踏み切る方針。野党側は委員会開催に当たり、採決はしないと確約するよう求めたが、与党は応じず、鈴木淳司委員長の職権で19日の委員会開催を決めた。

与党側は当初、17日の委員会採決を目指し、4時間のうち1時間は安倍晋三首相が出席して質疑を行うことを提案していたが、野党が不信任案を提出し委員会は流会。19日は首相出席による締めくくりの質疑を行わないまま、異例の採決となる見通しだ。【光田宗義、真野敏幸】

参照元 : 毎日新聞


「共謀罪」 危険な法制度はやめよ

2017年5月12日

「共謀罪」の審議がヤマ場を迎えつつある。国際組織犯罪防止条約の締結のためなら現行法のままで十分だ。テロ防止を掲げる法案の狙いが反政府の活動などの監視なら、あまりに危険だ。

国連の条約はマフィア対策のために各国が手を結ぼうという趣旨である。マネーロンダリング(資金洗浄)や人身売買、麻薬取引など金銭目的の犯罪を主眼としている。テロ対策ではない。

過去三回にわたって政府が共謀罪法案を国会提出したときもテロ対策としなかったのは、そうした理由からだ。しかも、国連の立法ガイドは「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを認めていると読める。日弁連もそう解している。

日本の基本原則とは、既遂の処罰である。話し合っただけで処罰される共謀罪などは、日本の刑事法の原則とは全く相いれない。とはいえ、日本でも重大犯罪については、未遂や予備、陰謀などの段階で処罰できる。もちろん、マフィア、暴力団対策の法整備が整っていることはいうまでもない。

だから、現行法のレベルで十分、国連の条約を締結できるはずである。何が何でも「共謀罪」と推し進める政府の姿勢に疑問を感じざるを得ない。

もっと不思議なのは、本来はマフィア対策の法律なのに現政権が「テロ対策」と冠を付けたことだ。東京五輪・パラリンピックと結びつけ、国民の理解を得ようとする狙いが透けてみえる。

だが、テロ対策法がテロを防ぐ万能薬でないのは米国やフランスなど各国をみればわかる。それに日本はテロ防止に関する十三もの国際条約を締結し、ほぼ完璧な状態とされる。とくに二〇一四年に改正されたテロ資金提供処罰法によって資金や土地など利益の提供が包括的に処罰の対象になった。

つまり現在、日本ではほとんどのテロ目的の行為は処罰できるのである。今回の法案は共謀、計画段階と準備行為の段階で処罰できるようになる。だが、話し合いという共謀や現金自動預払機(ATM)でお金を下ろすなどの準備行為の現場をどのように捜査当局はつかむのだろうか。つまるところ、広く監視するしかなかろう。

対象は本当にテロリストなのか。政府は国会で「一般国民は対象にならない」と繰り返した。では反政府の活動をする団体の人々はどうなのか。何らかの法に反していたら。そうした人々を監視する道具にならないか心配する。

参照元 : 東京新聞