カラオケ歌唱動画の投稿で敗訴 何がどう問題なのか、カラオケ大手メーカー2社に聞いた

2017年05月12日 20時57分 更新

著作隣接権を侵害しているとのこと。

カラオケで歌唱する動画をYouTubeに投稿した男性に対して、通信カラオケメーカーが訴訟を起こし、男性が敗訴していたことが分かりました。そもそも一体何が問題視されたのか、大手メーカー2社にお話を聞きました。

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カラオケ動画を投稿するのはなぜダメなのか

今回話題になっているのは、通信カラオケ「DAM」を展開する第一興商が起こした訴訟で、カラオケ店内で撮影した動画のアップロードの禁止と削除を求めたもの。

男性は答弁書で、「自主的に動画をYouTube上から削除した。そもそも自身の歌唱の様子を撮影したものであって、原告の利益を明確に侵害したとはいい難い」と主張しましたが、東京地裁は「原告の上記カラオケ音源にかかる送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たる」と判断。男性に敗訴を言い渡しました。

「DAM」を展開する第一興商に聞く、訴訟に踏み切った理由

そもそもカラオケをしている様子をYouTubeに投稿することにはどんな問題があるのか、第一興商の代理人・川野智弘弁護士にお話を伺いました。

――なぜYouTubeにカラオケの歌唱動画を投稿してはいけないのでしょうか

川野弁護士:一言にいうと、著作権法上違法だからです。例外的なケースもありますが、今回は第一興商の許諾を得ずに動画を公開しており、明らかに著作隣接権(※)を侵害しているものでした。歌唱動画に関する訴訟に関しては今回が初めてのケースになると思われます。

※著作隣接権:著作物の創作者ではないものの、著作物の伝達に重要な役割を果たしている事業者などに認められた権利

――今回問題となったのはどんな歌を歌ったものですか、また訴訟に踏み切ったのはなぜですか

川野弁護士:今回はLittle Glee Monsterの「私らしく生きてみたい」を歌唱したものです。当初はYouTubeの削除フォームから削除依頼を行いましたが、任意の削除に応じる気がないことなどを含めて訴訟に至りました。

――YouTube上での削除依頼を年間どの程度行っているのでしょうか

川野弁護士:YouTubeだけで、年間12万件程度です。第一興商としては違法な動画の取締を強化しています。

――インターネット上に歌唱動画を投稿することは許されないということなのでしょうか

川野弁護士:第一興商ではカラオケ歌唱動画をネット上に公開するために「DAM★とも」というプラットフォームを用意していますので、そちらをご利用いただきたいです。

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第一興商が運営するDAM★とも(公式サイトより)

またJOYSOUNDを運営するエクシングにも取材を申し込んだところ、同社が動画サイトに対して行っている歌唱動画の削除依頼は年々増加傾向にあるとのこと。

削除依頼の理由について詳しく聞いたところ、カラオケデータの著作隣接権はカラオケメーカーの資産であることから、動画をアップロードする場合には、ユーザーが個別にカラオケメーカーと契約を締結する必要があるとのことでした。

なお、第一興商と同様にエクシングが運営する「うたスキ動画(歌唱動画を投稿するサービス)」を利用すれば問題はないとのこと。

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エクシングが運営する「うたスキ動画」(公式サイトより)

エクシングではこれまでに訴訟に発展したケースはないとのことでしたが、JOYSOUNDの音源を使用した動画を発見した場合には、動画投稿サイトのユーザー利用規約違反として、投稿サイトの運営者に通報して対応を求めるほか、各動画投稿サイトのユーザー利用規約に従った措置(一定期間の利用停止や、ユーザーアカウント自体の停止なども含めたもの)を求めるとのことでした。

「歌ってみた」などの歌唱動画が人気を集める昨今、今回の判決は大きな波紋を呼びそうです。

(Kikka)

参照元 : ねとらぼ


カラオケ動画投稿ダメ…メーカーの権利侵害判決

2017年05月11日 17時27分

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自分がカラオケで歌う様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した東京都内の男性(45)に対し、東京地裁が、カラオケ機器メーカーの著作隣接権を侵害するとして公開禁止を命じる判決を言い渡していたことが分かった。

ユーチューブには同様のカラオケ動画が多数投稿されているが、公開を禁じた判決は初めてとみられる。スマートフォンの普及で動画の撮影や投稿が容易になる中、投稿者側は注意を払う必要がありそうだ。

◆削除要請12万件

「自己満足のために公開しただけなのに、裁判になったのは驚いた」。敗訴した男性はそう困惑する。

男性は昨年9月頃、都内のカラオケ店で人気女性グループの曲を歌った姿を自らスマホで撮影。約2分間の動画にし、ユーチューブに投稿して公開した。

参照元 : 読売新聞