【驚異の遺伝子学】世界初、死んだ胎児が父親に!! 謎の他者細胞「マイクロキメリズム」の怪

2015.10.28

もしも遺伝子検査によって子どもの父親が別の男だと判明したら、多くの人は妻の不倫を疑うだろう。ほとんどの場合は正しいかもしれないが、極稀にそのような事実がないにもかかわらず、子どもの生物学的父親が別の男になってしまうケースがあるという。では、なぜこのような事態が起きるのか、そして生物学的父親は一体誰になるのか――? 詳細についてお伝えしよう。

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■赤ちゃんと血液型がマッチしない!!

今月26日、米「BuzzFeed」をはじめとする複数の海外メディアが報じたところによると、まさに前述のケースが米国ワシントン州で起きていた。2014年6月、匿名の夫婦のもとに1人の健康な男の赤ちゃんが誕生した。しかし赤ちゃんの血液型を知った時、夫婦の喜びは一瞬にして困惑に変わる。なんと、赤ちゃんの血液型が両親の血液型とマッチしなかったのだ。

人工授精による妊娠だったため、夫婦はまず病院で精子が取り違えられた可能性を疑ったが、そのような事実はない。そして答えを求めるため、スタンフォード大学の遺伝学者であるバリー・スター博士のもとへとやって来た。

「当たり前ですが、ご両親は本当に参っている様子でした」(スター博士)

そこで博士は、生まれた赤ちゃんの遺伝子を詳しく検査した。すると、赤ちゃんの生物学的父親と夫は親族であることが判明する。そして、ますます混乱する夫婦を前に、博士はこれが極めて珍しい「マイクロキメリズム」が起きた結果であることを確信するのだった。

■驚愕!! 「マイクロキメリズム」の不思議

通常、人間は父と母の両者から受け継いだ2セットのDNAを持っている(「二倍体」)。ところが、過去にトカナでも報じているが「マイクロキメリズム」という現象では、細胞核に由来の異なる遺伝子まで含まれることになり(つまり2セット以上のDNAを受け継ぐことになり)、その後も体内に定着し続ける。マイクロキメリズムによって両親以外に由来するDNAを得た人々(キメラ)は、ムラのある肌の色や、左右で異なる色をした目、時には性器を2つ持って生まれてくるなどの外見的特徴を示すことさえある。これまでに世界で100例ほどしか報告されていないマイクロキメリズムだが、輸血や臓器移植、母親とその胎児の間で起こることが知られており、実際に判明していないだけで発生頻度は高いのではないかとの指摘もある。また、程度の差こそあれ、新生児の8人に1人の体内で何らかのマイクロキメリズムが起きていると考える専門家もいるようだ。

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■赤ちゃん、実は双子だった!

では、ワシントン州の赤ちゃんは一体どのようにして第3者の遺伝子を手に入れたのか? 実は当初、夫婦の子どもは双子だったことが判明している。しかし妊娠最初期の段階で一方が死に、それを生き残ったもう一方が体内に吸収したと考えられるという。

このような現象は「バニシング・ツイン(消滅した子ども)」と呼ばれ、決して珍しいことではない。しかし今回のケースでは、その吸収された双子の遺伝子が、吸収した側であるもう一方の双子の成長において大きな役割を果たしたため、結果として生物学的父親はこの“消滅した子ども”になったのだ。つまり、誕生した赤ちゃんの生物学的父親は、自らのきょうだいだったというわけだ。

両親の血液型は明かされていないが、たとえば母親の血液型がO型、父親の血液型がAB型の場合、生まれる子どもはA型かB型となる。双子がそれぞれA型とB型だったとしよう。もしも今回、吸収された側の双子がA型だとすると、吸収した側にとっての生物学的父親はA型、母親はO型ということになる。A型とO型の間にできる子どもは、A型かO型だ。そして本来B型であったはずの吸収した側が、O型として生まれてくると、たしかに夫婦と血液型がマッチングしない事態が起きるのだ。

今回のケースは、「マイクロキメリズム」によって遺伝子検査が欺かれた世界初のケースとなったようだ。ちなみに、本現象については実例が少なく研究も途上であるため、実態がよくわからない点も数多く残されている。いずれにしても、まだまだ人体には私たちの知らない謎と神秘が隠されていることだけは間違いないようだ。今後の展開を楽しみに待とう。

(編集部)

参考:「BuzzFeed」、「Medical Daily」、ほか

参照元 : TOCANA


夫の精子で出来た子が夫の子でなかったという珍事が米国で発生

2015年10月29日 17時36分

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米国ワシントン州に住む男性が、生まれた我が子の遺伝子検査をしたところ、生物学的には本人の子供ではなく、兄弟の子供であることが分かったという。

精子は確かに本人のもの
この34才の男性は、妻とともに不妊治療を受けており、生まれた子供は人工授精によるもの。

担当医は人工授精に使用した精子が夫本人のものであることを確認している。それにもかかわらず、生まれた子供の血液型が両親のどちらとも一致しなかったため、夫妻は遺伝子検査を依頼した。

遺伝子は兄弟のもの
医師が夫の唾液から採取した遺伝子を調べると、子供のものとまったく違っていた。つまり、100%夫の子供ではない。

ところが、夫の精子を調べると、10%という半端な割合が子供の遺伝子と一致した。これは、遺伝学的には、夫の兄弟が本当の父親であると考えられる。

だが、さらに不可解なことに、当の夫に兄弟はいないのだ。

兄弟は夫の体内に吸収された双子の一方
謎はさらなる検査で解けた。この夫は、生物学的に「キメラ」と呼ばれ、生まれる前は二卵性双生児だったが、母親の胎内で兄弟の身体を吸収し、その結果一人で生まれてきたということが分かった。

つまり、吸収された兄弟の細胞が体の中にまだあり、それが兄弟の精子を作っていたことになる。

「これには遺伝学者もビックリだ」と、遺伝子検査を行なった米国スタンフォード大学の遺伝学者バリー・スター氏は言う。

出典元:Man finds out absorbed twin is genetic father of his child - UPI(10.27)

出典元:How a Man’s Unborn Twin Fathered His Child - TIME(10.28)

参照元 : IRORIO