テレビ、ついに地獄の悪循環突入で再起不能?影響力減→CM減→制作費なし…

2015年7月31日(金)6時1分配信

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近年、日本人のテレビ離れが深刻だ。娯楽の多様化などによるテレビの失権が叫ばれる中、総世帯視聴率を表す「HUT」は1998年度下期の71.2%から、2014年下期には63.3%(ともにゴールデンタイム)に減少している。もはや、テレビにかつての影響力はないといっても過言ではないだろう。

では、マーケティングの観点からテレビ離れの原因を探ってみよう。立教大学教授・有馬賢治氏は以下のように語る。

「テレビ離れの大きな原因は、若者がリアルタイムで視聴しなくなったことでしょう。情報コンテンツの消費量自体は増加しているのですが、若者は最新・先端情報に対する興味が強いものです。それに応えるメディアは、現代ではインターネットにシフトしており、テレビの情報はネットの後追いになりがちです。そういった背景から、若者にとってテレビが必ずしも魅力的ではなくなってきているのです」

確かに若者のテレビ離れは顕著だ。総務省によると、テレビの1日の平均視聴時間は60代の263.0分に比べ、10代は102.9分と2時間以上の開きがある。

その影響は広告業界にも広がっており、マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが12年に発表したところによると「商品やサービスを実際に利用・購入する時に参考にしているメディア」で「商品比較サイト(24.0%)」が「テレビ(20.2%)」を上回っている。

「テレビCMで若者の購買意欲をかき立てるのは、難しい時代になっています。テレビを視聴する機会自体が減少している以上、テレビCMを目にする機会も減っており、自社のCMが見られる機会は『偶然』に近くなっているでしょう。その意味で、テレビCMにどれだけの広告効果を期待できるのかは疑問です。もはや、有名人を起用して商品の機能性だけを宣伝しても、消費者には響かないのです。テレビCMにさほど効果がないのであれば、企業は高い広告費をテレビ局に払いたくはありません。すると、テレビ局は制作費が少なくなり、低予算で時間をつなげるフォーマット化したトークバラエティ番組しかつくれなくなってしまいます。そして、視聴者がさらに離れ、より広告効果が上がらない、という負のスパイラルに陥っているといえます」(有馬教授)

●5秒で惹きつけるネットCM

それに比べて、ネットのCMはどうだろうか。最近では、「YouTube」や「ニコニコ動画」などの動画共有サイトで動画を再生すると、CMが流れることも多くなっている。

「それだけ、広告主から『ネットに広告を打つ価値がある』と認められている証拠です。最近では、『YouTuber(独自制作した動画を『YouTube』で公開し、広告収入を得るクリエイター)』として何千万円も稼ぐ人が出てきていますが、そういった職業が成り立つのも、多くの企業がネットに広告を出しているからです。内容を見ると、ネットCMは5秒など一定時間後にスキップできるものも多いため、最初の数秒で視聴者の心を惹きつけるような工夫もしています。そのあたりの企業努力が、“垂れ流し”の多いテレビCMとは異なるのかもしれません」(同)

そうなると、気になるのはテレビCMの今後だ

「体形の劇的な変化を表現したRIZAP(ライザップ)のCMは、視聴者に『おいおい、本当かよ』というツッコミをさせることで注目を集めましたが、このような話題提供型は特例です。基本的には『続きはウェブで』というように、いかにテレビからネットに誘導できるかがポイントになってくるでしょう。今後の企業の広告活動は、テレビ中心ではなく、ネット上で話題が共有されるように紙媒体や屋外広告などを巻き込んだクロスメディア展開型が多くなると思います」(同)

テレビCMにも、時代に適応する柔軟性が求められているということだろう。

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio

参照元 : Business Journal