これはありなのか? 幸福の科学・大川隆法が「ムハンマド」の霊言本を出版しテロ肯定

2015.02.20
 
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フランスの週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃事件から約1カ月半、またしてもデンマークのコペンハーゲンで2名の犠牲者を出す銃撃事件が起こった。今回、ターゲットとなったのは、ユダヤ教会の礼拝所と、風刺画や言論の自由について訴える集会だった。──そんななか、日本でも「シャルリー・エブド」の風刺画を掲載した『イスラム・ヘイトか、風刺か──Are you CHARLIE?』が第三書館から2月10日に発売され、大きな批判が起こっている。

第三書館の北川明社長は、出版の動機を「同紙が掲載してきた風刺画にはヘイトスピーチとの境界線上のものもある。どういう表現なら認められるのか問題提起したい」「イスラム教徒がなぜ風刺画を嫌悪するのか、現物がないと議論が深まらない」(1月24日付、朝日新聞)と語り、風刺画の正当性を問うものだと説明している。実際、本のなかではイスラム教徒に配慮して預言者ムハンマドの顔にはモザイクをかけるといった加工をほどこしてあるが、それでもネット上では「イスラムと日本の対立を煽る意図がある」「日本でテロを起こしたいのか」と批判の声が続出している。
 
だが、かれらは知らないのだろうか。現在、書店ではこの本よりももっと危ない本が平然と並べられ、売られている現実を。──それは、1月24日に発売された幸福の科学総裁・大川隆法の『ムハンマドよ、パリは燃えているか。―表現の自由VS.イスラム的信仰―』(幸福の科学出版)だ。本書のなかで大川氏はいつもの“霊言”でムハンマドを降ろし、過激な発言を連発させているのだ。
 
まず、大川氏が降ろしたムハンマドは、質問者(幸福の科学関係者3名)からシャルリー襲撃についてどう考えているのかを問われ、「何?「殺していいかどうか」とかいうこと?」「だからさあ、もとは……、まあ、フランスも、空爆とか、いろいろ近代兵器を使って、イスラム教徒をいっぱい殺してるからねえ」と回答。そして、質問者がやんわりと“言論ではなく暴力で対抗するのは受け入れがたい”と伝えると、こんなことを言い出すのだ。
 
「いや、小さいじゃないか。だって、犯人だけ撃ったんだろう? 犯人を潰しただけでしょ? あれは、ほとんど、池田屋の斬り込みと一緒だよ」
 
い、池田屋ってあの幕末の池田屋!? 大川氏の霊言によるムハンマドは日本に造詣が深いらしく、その後も「オサマ・ビン・ラディンなんていうのは、日本でいやあねえ、武市半平太なんだよ!」などと発言。さらに、シャルリー襲撃犯について、「それは、天国に還って、もう処女百人ぐらいはべっとるよ。酒を飲んでいるだろう。(中略)当然だよ。もう英雄でしょう、当然ながら。それはそうですよ。神風特攻隊が、敵の航空母艦にぶつかって沈めたようなもんだよな」と言ったかと思えば、やはりなぜか話題は日本に移り、こう怒り出す。

「やられたら、やり返さなきゃ駄目なのよ。だから、第二次大戦で徹底的にやられて、七十年かかって、まだやり返していないっていうのは、情けない話だ。実に情けないわ」
 
「敵に押しつけられた憲法九条だか何だか知らんけど、それを「平和主義」って、どこの平和なんだ」
 
「日本で結婚しない婦女子が多すぎる! だから、さっさとさらってきて、どんどん子供を産ませたらいいんだ」
 
……もう、そのへんの日本の保守オジサンにしかみえないが、問題は過激派集団に対する評価を口にしている箇所だろう。
 
たとえば、過激派である「パキスタン・タリバン運動」がペシャワルの学校を襲撃した事件には、「それは、イスラム教の崩壊を招くからね、そのままだったら」と容認。女性が学校に通っていることも「それは“堕落”だよ」「ええ? それで娼婦になっていくんでしょ? みんなねえ」「本当は、家から一歩も出したらいけないんだよ、未成年のうちは(机を一回叩く)」と興奮。そして、「イスラム国」のバグダディを「いいねえ。久々にいいねえ」「あの小さいのに、よくカリフを名乗った。偉い。うん。偉い、偉い」と褒め称え、「まあ、私が「最後の預言者」っていうことになっているから、出しにくい。だから、「プチ預言者」と呼ぼう」とさえ口走るのである。
 
大川氏がムハンマドの霊言を行うのはこれが初めてではないが、今回はさすがにヤバイと思ったのか、本書には何度も(注。あくまで霊人の意見である)(注・過激な発言であるが、霊人の意見のままとした)という注意書きが登場する。ついにはムハンマド(の霊言)までもが、「今日の私は、これは“映倫に引っ掛かった”ような、無駄仕事をしちゃったかなあ」と心配し、「今日は、おべんちゃらを言うやつが一人出てきてないから(中略)それで、発禁処分になりそうなんだよ。「国際(本部の人間)」は、全然役に立たない。もうクビにしろ、早く」と幸福の科学内部の人事批判まではじめる始末。
 
とはいえ、孔子からキムタク、本田圭佑、小保方晴子さんまで、誰彼構わず霊言本を出版してきた過去を考えると、今回のムハンマド本も通常通りの“幸福の科学クオリティ”であることに違いはない。ただ、過激派によるテロやバグダディの行動を、ムハンマド(の霊言)に肯定させるというのは、イスラム教への冒涜であり、イスラム教徒を侮辱する行為ではないか。
 
しかし、なぜかだれもこの本を追及しない。いちいち真面目に取り上げるのもバカバカしいと思っているということなのか。それとも、メディアにとってみれば、幸福の科学はありがたい広告主であり、批判記事を書けばすぐさま訴訟を起こしてくる厄介な存在だから、極力触れたくないということか。
 
いずれにしても、シャルリーの風刺画がイスラム教徒へのヘイト表現になっていないかを検討する本が叩かれ、この言いたい放題の本が問題の俎上にもあがっていないのは、なんとも理不尽な気がするのだが……。
(田部祥太)

参照元 : LITERA