<電力関連会社>自民党へ3228万円献金 5社・3年で

2014年12月1日(月)5時1分配信
 
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関西、中国、四国、北陸の4電力の関連会社や子会社が福島第1原発事故から昨年までの3年間に、自民党の政治資金団体「国民政治協会」へ、判明しただけで計3228万円を献金していたことがわかった。4電力はいずれも、原発再稼働に向けて安全審査を原子力規制委員会に申請している。電力各社は大幅な電気料金値上げを実施した1974年を機に、公益企業として特定政党への献金は不適切だとして建前上自粛している。

同協会の2011〜13年の政治資金収支報告書によると、原発事故後の献金額は、関連会社では関電の「きんでん」が1300万円で最多。他に中国電の「中電工」、四電の「四電工」、北陸電の「北陸電気工事」が献金を続けていた。子会社では四電の「四電ビジネス」が献金した。

11年は、東京電力の関連会社「関電工」が福島第1原発事故前後の1月と4月に計680万円、中部電力の子会社「トーエネック」も事故前の1月に600万円をそれぞれ献金した。しかし、12年以降は確認されなかった。

全国では、07年から子会社に献金自粛を呼びかけている九州電力の例がある。子会社や関連会社の献金について取材に対し、関電は「各社が適否を判断している。関与すべきでない」▽中国電は「コメントする立場にない。献金自粛は呼びかけていない」▽四電と北陸電は「各社の判断。承知(把握)していない」−−とそれぞれコメントした。

一方、4電力は献金については今回確認されなかったが、政治家のパーティー券購入は続けている。理由について、「情報収集」(関電、四電、北陸電)や「儀礼的なつきあい」(中国電)としている。

政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大大学院教授(憲法学)は「電力会社は表向き献金自粛を言っているだけで、抜け穴があるのが実態だ。自粛を徹底するなら、関連会社の献金やパーティー券購入も自粛しないと意味がない」と指摘している。【関谷俊介】

参照元 : 毎日新聞

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法人減税、献金再開 政策をカネで買う? 経団連の露骨

2014年09月11日 東京夕刊
 
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◇自民「ありがたい」/中小企業は「メリットなし」/「財界主権」に懸念の声

大企業約1300社・団体が加盟する「財界の総本山」経団連が5年ぶりに会員に政治献金を呼びかけることになった。その経団連は、法人税の実効税率引き下げと消費増税を自民党に要望している。大企業優遇の政策をカネで買うのか−−。経団連は、この国民の疑問にどう答えるのか。【浦松丈二】

東京都千代田区の経団連会館5階。8日に開かれた榊原定征(さだゆき)経団連会長の定例会見はいつにない熱気に包まれた。この日の会長・副会長会議で献金再開方針が決まったからだ。

記者 中小企業は消費増税などで非常に厳しい。経団連が政治献金の呼びかけを復活し、法人減税などの政策を引き出すのは大企業のエゴではないか。

榊原会長 法人減税で大企業に有利な政策を引き出すための献金という声があるのは非常に心外、残念だ。一部マスコミは「政策をカネで買う」という表現を使っているが、そういう考えは全くない。民主政治をきっちりと維持するためのコストとして一定の社会貢献をすることは企業の責任だ。

記者 自民党との関係修復のための献金では?

榊原会長 今は本当に日本はダメになっているんですよ。ぎくしゃくとか何とかではなくて(政財界は)一緒にやらなければいけないんですよ。

一体何のためにカネを出すのか? 禅問答のようなやりとりが続いた。

榊原氏は経団連会長就任前日の6月2日、2009年10月以降、中止している政治献金の再開方針を言明した。翌3日、自民党税制調査会は法人税の実効税率引き下げを容認。安倍晋三首相は野田毅税調会長に、15年度からの法人減税を骨太方針に明記するよう調整を指示した。

経団連役員経験者は「アベノミクスに批判的な米倉(弘昌)前会長時代に自民党との溝が広がった。榊原新会長は献金再開で関係修復を図ろうとしているのだろうが、あまりにあからさまな政権への擦り寄りとみられて、身内の経団連役員からも反発を招いている」と解説する。

町工場が集まる東京都大田区。「政治献金? 中小企業は献金をもらいたいぐらいだね。大企業はもうかっているというけど、中小企業の経営者でアベノミクスの恩恵を受けたという人には会ったことがないよ」。そう苦笑いするのは従業員14人の自動車部品製造「一英化学」の西村英雄社長(72)だ。

同社はノーベル賞を受賞した山中伸弥・京都大教授が使用した実験器具「マイクロピペット」の先端を開発した、技術力を誇る町工場だ。しかし、東日本大震災で自動車メーカーの製造ラインが止まった影響で一昨年に赤字転落。その後、受注減を補うために特殊樹脂製のはし「すべら膳」などの新商品を開発、大手依存から脱却してきた。

そこに冷水を浴びせたのが消費増税だ。増税分の全額転嫁は難しく、材料費の高騰もあって苦しい経営を強いられる。西村社長は「リーマン・ショック以降の不況からようやく持ち直してきたのに、消費税が10%に引き上げられたらどうなるか分からない。多くの中小企業が『税金倒産』してしまう」と危機感を募らせる。

法人減税が実現しても、赤字か黒字幅の小さい中小企業にはメリットはほとんどない。さらに政府は、その法人減税の財源として、黒字・赤字にかかわらず企業に課税する「外形標準課税」を来年度から今の2倍以上に拡大する案を示している。中小企業には消費増税に続く追いうちだ。「大企業優遇への見返りが経団連の政治献金なのだろう。しかし、部品を作る中小企業がつぶれたら大企業だって存続できるのか」と疑問を口にした。

最盛期の1983年に9190社あった大田区の町工場は30年で約3分の1に減少した。約870社が加盟する大田工業連合会の舟久保利明会長は「事務所だけ大田区に残し海外に工場を移した工場も多く、産業の空洞化は深刻だ。消費増税やガソリン、電気代の値上げで二重三重に経営が苦しくなった。日本経済再生には中小企業振興が不可欠で、外形標準課税の増税などもってのほかだ」と訴える。

「企業・団体による政治献金は全面禁止にすべきです。憲法は国民主権を定めているが、企業による政治献金が横行すれば政治は企業の方を向き、実質的には大企業中心の財界主権になってしまう」。市民団体「政治資金オンブズマン」共同代表の上脇博之・神戸学院大教授(憲法学)はそう力を込め、「そもそも」と続けた。「企業は政治活動ではなく経済活動をする法人です。株主はその前提でカネを出しており、献金が利益を生まなければ株主を裏切り、利益を生めば贈賄になるという矛盾を抱えている」

政治献金への経団連の対応は二転三転してきた。1955年の自民党結党以来、会員企業、業界団体に具体的な金額を割り当てる「あっせん方式」で献金してきたが、これが金権腐敗の温床となり、リクルート事件、佐川急便事件、金丸信自民党副総裁の巨額脱税事件につながっていく。

献金への世論の批判や非自民連立政権誕生、自民党下野を受け、93年に経団連の平岩外四会長(当時)が「(民主政治にかかる)必要最小限の費用は、民主主義維持のコストとして、広く国民が負担すべきである。従って、政治資金は、公的助成と個人献金で賄うことが最も望ましい」とする「企業献金に関する考え方」を発表。94年にはあっせん方式での献金を中止した。

95年からは国民1人当たり250円の税金を原資に、総額約320億円を議席数、得票数に応じて各党に支給する政党助成制度が始まっている。上脇教授は「政党交付金と企業献金の二重取りをし、自民党が経団連の政策を優先して主権者国民に痛みを押し付ければ、事実上の財界主権との批判は免れない」と指摘する。

榊原会長は9日、自民党本部を訪れて、谷垣禎一幹事長らに献金呼びかけ再開を報告し、経団連と自民党との間で政策協議の場を設けたいと要望した。これに対し、谷垣幹事長は「自発的な政治寄付の呼びかけは大変ありがたい」と謝意を示し、政策協議の定期開催に同意した。

献金すれば自民党と政策協議ができる、と各企業に印象づけるかのような、あまりにも露骨な演出ではないか。これでは国民の疑問は深まるばかりだ。

参照元 : 毎日新聞