断食の効用:免疫系を再生させる科学的確証

2014年6月16日(月)07:50

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断食することにより、免疫系が回復するという研究結果が発表された。高齢者やガンの化学療法を受けている患者にとってとりわけ有益な発見だ。

わたしには、毎年数日間断食をする友人が2人いる。彼らは、最初は疲労して空腹を感じるけれど、その後すぐに、より力強く、集中して、活動的で、エネルギーがあふれているように感じるのだと証言する。わたしはこうしたことに常に魅力を感じてきた。しかし、完全に納得したことはなかった。ほかでもなく、怠慢のためだったが。

しかし今、南カリフォルニア大学長寿研究所のヴァルテル・ロンゴの行った研究が、科学的確証をもたらしている。3日間の断食は、免疫系全体を再生させる。これは、高齢者においてもだ。

これまで断食は確かに「流行」したが、栄養学者たちの見解は反対だった。しかし、研究によれば、短期間食事をしないことで細胞は刺激を受け、新しい白血球を生み出すことになる、というわけだ。白血球は、感染に打ち勝ち、病気を遠ざけることで、免疫系を回復させる。

ロンゴはこう説明する。「断食の間に、体は、損傷し老化して不要となった細胞から解放されます。おそらくは、エネルギーを節約しようとするからでしょう。高齢者や、化学療法を受けている人の体のことを考えるなら、私たちはこの効果の重要性をよく理解することができます。断食は、文字どおり新しい免疫系を作り出すのです」

実験の間、被験者たちは、6カ月ごとに2〜4日間、食事を避けなければならなかった。分析からは、断食が、老化や腫瘍の成長のリスクと関係する酵素、PKA(プロテインキナーゼA)を減少させることに貢献したことがわかった。

化学療法を受けている患者においては、食事を控えることで、副作用が最小限になることが観察された。「わたしたちは、断食が幹細胞を活性化させられることを発見しました。幹細胞は、免疫細胞を再生し、化学療法によって起きる免疫抑制の防止が可能になるようです。さらにマウスにおいては、免疫系を若返らせられるようになります」

もし確証が得られれば、この発見は、研究者たちが実験を行い始めた腫瘍患者たちにとって、この上なく有利なものになるだろう。断食は、ジェノヴァのガズリーニ病院でロンゴが行った先行研究ですでに示されたとおり、化学療法の効果を最大20倍強化することができるだろう。

断食は、完全に健康な体にとっても、体調を改善するのに役立つとも言えるようだ。「数日間食事を控えることが人体に害を与えるという証拠は何もありません。その一方で、特筆すべき恩恵をもたらすという強力な確証が存在します」と、ロンゴは語った。

参照元 : ワイヤード


断食によって幹細胞が活性化し、老朽化した免疫系が再生する

2014年6月6日

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(2014年6月)"Cell Stem Cell" 誌に掲載された南カリフォルニア大学の研究によると、断食によって幹細胞が休眠モードから自己再生モードに切り替わり、免疫系が回復します。 6ヶ月のうちに2〜4日間ほどの断食を繰り返す(頻度は不明)ことによって、古くなって傷んでいる免疫細胞が破壊されて、新しい免疫細胞が作り出されるというのです。

今回の発見は、自己免疫疾患(リウマチ・1型糖尿病・セリアック病など)や、ガンの化学治療の副作用、老化による免疫不全などの治療の開発につながる可能性があります。

研究者は次のように述べています:

「飢餓状態になると、体はエネルギーを節約しようとして、使われていない免疫細胞の中でも傷んでいそうなものから優先的に大量にリサイクルに回します」

マウス実験では、断食期間中に造血幹細胞(血液と免疫系の再生を行う)のシグナル伝達経路が変化することが確認されました。 これはつまり「免疫系再生のスイッチが入った」ということです。

断食期間中に体は、ブドウ糖、脂肪、およびケトンの蓄えを消費することを余儀なくされますが、このとき白血球も同時に相当な量が分解されます。

「ヒトでもマウスでも長期間の断食によって白血球の数が減少し、その後、栄養補給を再開したときに戻っていました」

白血球の枯渇によって、幹細胞ベースの免疫細胞再生の引き金となる変化が生じます。 特に注目すべきは、断食によって PKA という酵素が減少する点です。

過去に下等生物(回虫かショウジョウバエでしょうか)を用いて行われた実験で PKA の減少に寿命を延ばす効果のあることが示されています。 そしてそれとはまた別の研究で、この効果が幹細胞の自己再生および多分化能(様々な種類の細胞へと変化するという幹細胞の能力)によるものであることが示されています。

さらに、IGF-1 の量も断食によって減少していました。 IGF-1 は成長因子(ホルモン)の一種で、加齢や、腫瘍の進行、ガンのリスクに関与しています。

「幹細胞が再生モードに移行するには、PKA を遮断することが重要です。 そうすることによって、幹細胞が増殖して免疫系全体の再構築が開始されます。

都合の良いことに、断食では免疫系のうち効率の悪い部分、すなわち傷んでいたり古くなっていてたりする可能性のある部分が処分されます。 化学療法や加齢などによってひどく痛めつけられた免疫系も、断食を繰り返せば文字通り新しい免疫系に生まれ変わることが出来ます」

同研究グループが行った小規模な予備的臨床試験では、化学療法の前に72時間の断食を行うことで、抗がん剤が免疫系に与えるダメージを緩和できるという結果が出ています。(抗がん剤でダメージを受けた免疫系が断食によって再生するのとは別に、抗がん剤によって免疫系がそもそも受けるダメージが減るということでしょう)

ただし研究者は「断食は医師の監督の下で行うように」と注意しています。

参照元 : 最新健康ニュース


Cell Stem Cellに載った研究

Chia-Wei Cheng, et al.

Prolonged Fasting Reduces IGF-1/PKA to Promote Hematopoietic-Stem-Cell-Based Regeneration and Reverse Immunosuppression