ワタミ、49億円の赤字 不振の業界にスタバが追い打ちをかける可能性も

2014年05月03日 14時32分 JST

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居酒屋チェーン大手のワタミが上場後初めて赤字となった。経営不振なのはワタミに限った話ではなく、居酒屋業界全体で業績低迷が続く。この状態にさらに追い打ちを掛けるのが「スターバックス(スタバ)」ではないかとの見方がある。

■ワタミ、上場後初の赤字 しかも49億円

ワタミは5月2日、2014年3月期の連結決算を下方修正し、49.1億円の赤字に転落すると発表した。ワタミは、2013年10月の時点でも下方修正しているが、このときは12億円の黒字と予想していた。

赤字は1998年の上場後初めて。不振の原因についてワタミは、主力部門の外食事業の客数が回復せず、既存店売上高が、前年比で93.1%と大きな落ち込みを記録したことが原因だと分析している。

しかし、居酒屋部門が赤字となっているのはワタミに限った話ではない。業界2位で「甘太郎」などを展開するコロワイドが4月30日に発表した2014年3月期決算では、レストラン業態が堅調に推移して黒字となったが、居酒屋部門は苦戦。ワタミと同様に2013年秋には、居酒屋部門の既存店売上高の落ち込みなどを理由に業績を下方修正していた。

日本フードサービス協会によると、2013年は景気回復傾向で外食産業全体が堅調に推移するなか、居酒屋の売上高が5年連続して前年を下回っている状況だという。

■「スタバ」で飲んで帰る時代が来る

居酒屋業界の不振に、コーヒーチェーン大手のスタバが追い打ちをかけるのではないかとの見方がある。スタバは2014年3月、アメリカ国内において午後4時からビールやワインなどのを販売する店舗を、本格展開することが報じられた。

参照元 : The Huffington Post


居酒屋になる「スタバ」…米国外食産業「酒販売」で“客単価アップ”図る構図は日本の近未来図か

2014.4.6 12:00

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さて、今回のエンターテインメントは久々となる食べ物のお話です。

居酒屋チェーンのワタミが先ごろ、今年度中に全店舗約640店の約1割に当たる60店舗を閉鎖すると発表しました。各方面から労働環境が過酷な「ブラック企業」と名指しされることが多いワタミですが、店舗の閉鎖で余った社員を近隣の店舗に振り分けることで、1店舗当たりの従業員を増やし、労働環境を改善しようというのが目的のようです。

実際、外部の有識者で組織するワタミの業務改革検討委員会も「所定労働時間を超える長時間労働が慢性化している」「始業終業時刻を正しく記録していない」などと、労働環境の過酷ぶりを指摘しています。

こうした指摘などを受け、ワタミでは店舗の閉鎖&従業員の振り分けのほか、会議の時間を減らしたり、メンタルヘルスに関する相談窓口を設置するなど、社員の健康管理の充実も図るといいます。

なぜいきなりワタミのこのニュースをご紹介したかといいますと、昨今の積極的な出店攻勢がたたり、外食産業では労働力不足が顕在化。その影響をモロかぶりして苦戦する居酒屋業界を象徴する事例だったからです。

ブラック企業…象徴の飲食業、米国で進む“ワタミ化”

そのうえ最近では、ファミリーレストランやスペインバルのような場所で軽く一杯飲んで帰宅するサラリーマンやOLが急増。居酒屋はますます苦境に立っているといいます。

そんな日本の居酒屋業界にさらなる大打撃を与えそうなニュースが米国で報じられました。SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)の紙面でもご紹介しましたが、日本でもおなじみの米コーヒーチェーン大手、スターバックスが、米国の店舗で午後4時からワインとビールを提供するという“居酒屋サービス”を本格化させるというのです。このニュースについて、さらに深くご紹介したいと思います。

スタバのCOO(最高執行責任者)トロイ・アレスティード氏が3月19日、米金融経済通信社ブルームバーグとのインタビューで明かし、米紙USAトゥディやロサンゼルス・タイムズなど全米メディアが3月20日までに一斉に報じましたが、スタバでは2010年から全米にある約1万1500店のうち、本社のあるシアトルをはじめ、シカゴやロサンゼルス、ワシントンDC、ポートランド(オレゴン州)などの計26店で「スターバックス・イブニングス」と称した酒類の試験販売を行っていました。これを年末には40店に増やし、数年後には数千店規模に増やすというのです。

アレスティードCOOはブルームバーグに「長期間テストを続けたが、酒類販売は有効なプログラムだ。夕方以降の売り上げも伸びる」と強調。スタバの広報担当者もUSAトゥディに「夕方以降も顧客が集い、互いがくつろげる新たな機会の創出を求めるわれわれにとって(酒類販売という)このコンセプトは自然な形での前進である」と説明しました。

「スターバックス・イブニングス」で販売する酒類はビールとワインです。ビールは1杯約4ドル〜約5ドル(約400円〜500円)。ワインはカリフォルニア産が中心で1杯6ドル〜15ドル。おつまみ類は、デーツ(なつめやし)のベーコン巻きやチキンの串焼きパルメザンチーズ風味、チョコフォンデュなどで1皿3ドル〜5ドルと、どれもお手軽価格です。

とはいえ、ちりも積もれば山となります。お店側としてはコーヒー1杯で長時間居座られるよりは客単価が確実にアップします。

実際、3月19日に開かれた年次株主総会でスタバの実質的な創業者兼CEO(最高経営責任者)のハワード・シュルツ氏は「現在の平均客単価は5ドルだ」と説明しましたが、酒類販売が本格化すればこれが最低でも2倍に増えるのは確実です。シュルツCEOはこれを見据えてか、株主を前に「われわれは成長と発展の初期段階にいる」と宣言しました。

小さなコーヒー焙煎…40年で世界2万店に

現在、日本を含む全世界で2万100店を展開するスタバですが、もともとは1971年にシアトル(西海岸ワシントン州)で開業した小さなコーヒー焙煎会社でした。

ところが82年に店舗開発やマーケティング担当の役員として入社したシュルツ氏がその翌年、海外出張先のイタリア・ミラノで遭遇したエスプレッソバーに感動し、これをシアトルで試験的に展開したところ大人気に。

シュルツ氏は85年に独立し、スタバの豆を使ったコーヒーとエスプレッソを提供するコーヒー・チェーン店を創業。これが当たり、87年に地元の投資家の援助でスタバの資産を買収し、自分がCEOとなります。

これまで米国にはなかった風味豊かなイタリアン・コーヒーはシアトルを中心に全米で高い人気を博し、96年には全米での店舗数が1000店を突破。この年の8月には東京・銀座に1号店を開業するなど、破竹の勢いで全世界に店舗網を拡大します。

ところが、急激な出店攻勢で目新しさを失ったため、2006年あたりから失速。07年には原材料費の高騰を理由に商品の販売価格を値上げを強いられたうえ、この年、主戦場の米国でマクドナルドが本格的な上質のコーヒー販売に踏み切り、苦境に立ちます。

そこで2008年1月、事実上の創業者といえるシュルツ氏が8年ぶりにCEOに返り咲き、7月に米国の不採算店など600店を閉鎖するといったリストラを敢行します。

しかし、この年の8月に初の赤字決算を計上。翌月のリーマン・ショックで世界的な消費不況が起こったため、09年、新たに全世界で300店を閉鎖し、6000人の従業員の削減に踏み切るなど、リストラを加速させます。

その一方、昨年11月にはニューヨーク市にお茶の専門店を出店するなど、ジュースや菓子パンに続くコーヒー以外の商品の販売を積極化するとともに、中国などアジアの新興市場への出店攻勢に転じました。そして、攻めの経営展開の“最終兵器”とでもいうべき酒類販売に踏み切ったわけです。

ちなみにスタバは酒類販売の本格化と同時に、米大物女性テレビ司会者オプラ・ウィンフリーさんが企画したお茶「オプラ・チャイ・ティー」の販売計画も発表しています。

日本的感覚では、コーヒー・チェーンの酒類販売は何だか腑に落ちない気もしますが、実はいま、米国の外食産業では“居酒屋化”がどんどん進んでいます。理由は簡単。人件費を増やさず、ちょっとした工夫で客単価がアップできるからです。

例えばバーガーキングは4年前から観光客で賑わうフロリダのビーチに作った新業態店「ウォッパー・バー」でビールの販売をスタート。日本ではあまり知られていませんが、米では有名なハンバーガーが中心のファストフードチェーン、ソニックも3年前からフロリダの数カ所でビールを販売。米大手レストランチェーンのアップルビーでも最近、酒類の売り上げが急増しているといいます。

また、別のハンバーガーチェーン、レッドロビンは3月中旬から、でかいソフトクリームが乗ったマンゴー味のワインとウオツカのカクテルという正体不明の飲料の販売を始め「酒なのかジュースかなのかはっきりさせてほしい」とけっこう物議を醸しています。

こうした米国の外食産業の“居酒屋化”はスタバの参入でさらに活発化するのは間違いありません。ちなみにスタバではいまのところ、ビールとワインを除く他の酒類の販売や、米国外の店舗での酒類販売は計画していないといいますが、米国で起こったビジネスの動きが必ず数年後に波及する日本ですから、日本のスタバ、いやそれ以外の予想もしない外食産業やサービス業のお店でビールやワインが立ち飲み感覚で楽しめるようになる日は案外、近いかもしれません…。

(岡田敏一)

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部などを経て現在、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

参照元 : 産経ニュースWEST

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