餃子の王将 大東社長射殺事件で浮上した中国マフィアの影

2014.01.14 07:00

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昨年末、日本を震撼させた大東隆行・王将フードサービス社長(当時)の射殺事件から1か月が過ぎようとしている。捜査当局はあらゆる可能性を排除せずに捜査を進めているというが、中でも中国マフィア関係者の動きに注視しているという。

「事件の実行部隊は、もう日本を離れとるかもしれん。出入国記録を洗ったら、怪しい中国人の出国があったんや」
 
そう言葉少なに語るのは府警の捜査関係者だ。事件の背景として、王将を巡るさまざまな問題が取り沙汰されてきた。大東氏の前任者である3代目社長長男の不自然な失踪、福岡のゴルフ場への多額の貸し付け、大阪の店舗で発生した火災の事後処理における所得隠し。
 
だが、どれも大東氏が社長に就任する以前のことで、直接事件に繋がるとは考えにくい。その中でも、今回浮上した中国でのトラブルの発端は、大東氏が肝いりで始めた中国進出事業に関するものなので、当局の関心も高い。中国・大連で飲食店を経営する日本人実業家がいう。

「日本企業が中国で飲食店を開くのであれば、土地取得や許認可などで便宜を図ってもらうために、中国共産党の役人や政治家へのコネが必要になる。そのための水先案内人となる現地のパートナーとの関係は何よりも大事。もちろん、いわゆる“みかじめ料”も発生する。王将は、日本人が多く住む大連に2005年に進出してきた。しかし、直後に現地のパートナーと揉めてしまった」

王将の現地パートナーは地元のマフィアと繋がっていて、権利関係を巡って王将と関係が悪化。2、3年前から、店舗が水浸しにされるなどの嫌がらせが行なわれていたという。前出の実業家が続ける。

「たとえば吉野家は、中国で400店舗近く展開しているし、味千ラーメンも中国に500店舗以上も出している。しかし、王将は大連の4店舗だけ。日本での規模を考えれば、もっと拡大していいはずなのに、できない。現在もトラブルを引きずっているからだろう」

しかも、大連店舗の売上高は減少傾向にあり、1店舗当たりの売り上げは日本の10分の1ほど。トラブルが要因なのか、苦戦していることがわかる。さらに、犯人が中国マフィアである疑いを濃くするのが、犯行に使われた拳銃だ。25口径の拳銃だとされているが、暴力団など日本の犯罪組織はあまりこの銃を使用しない。

警視庁の組織犯罪捜査関係者がいう。

「25口径は弾丸が小さく、殺傷能力が低い。訓練を積んだ者でなければ相手を死に至らしめることは難しいので、ヤクザが“殺し”に使う拳銃は35口径がほとんど。そもそも暴力団への締め付けが強いこのご時世、暴力団が白昼堂々、犯行に及ぶのはデメリットが大きすぎて考えにくい」

店舗の売り上げや権利にチャイナマフィアが関心を持っていたとすれば、事件の重大な背景だといえる。しかも、「中国のマフィアに多い人民解放軍出身者であれば、訓練されているので、小口径の銃の扱いに慣れている」(同前)という。

生前の大東氏が、日本の裏社会にルートを持つ大連在住の中国人実業家にトラブルの収拾を依頼していたという情報もある。大東氏と王将の無念が、一刻も早く晴らされるのを祈るばかりだ。

※週刊ポスト2014年1月24日号

参照元 : NEWSポストセブン

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