死の宣告ではなくなったHIV 25回目の世界エイズデー

2013.12.02 Mon posted at 17:38 JST

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(CNN) 12月1日は25回目の「世界エイズデー」。今年はエイズ治療研究の分野で画期的な成果が報告された年だった。かつては死を宣告されたも同然だったエイズウイルス(HIV)感染者も、今ではほぼ普通の生活を営めるようになり、治癒に向けた展望も見え始めている。

エイズ・HIV研究を巡っては、今年3月、HIVに感染した子どもが実質的に治癒したという症例が報告され、7月には成人の感染者2人が幹細胞移植を受けてHIVの痕跡が消え、抗HIV薬による治療を中止したという発表があった。

エイズ研究機関amfARのケビン・ロバート・フロスト代表は「世界で3500万人の感染者に応用できる治療法の確立のためにまだやるべきことはたくさんある。だがエイズの治癒に向けた現実的な展望は見え始めている」と指摘する。

HIVが発見された1981年当時、HIV感染の診断は、死の宣告に等しかった。

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ジャスティン・ゴフォースさんは92年、看護学を学んでいた26歳の時に陽性と診断された。当時まだ治療の選択肢はほとんどなく、感染者は米食品医薬品局(FDA)が87年に抗HIV・エイズ薬として初めて承認したAZTを処方されていた。

だがこの薬には命にかかわりかねない深刻な副作用があった。

「私はとても具合が悪く、ただ黙って泣き続けた。看護師が私をなぐさめようと、『あなたはまだ感染しただけだから、死ぬまでには6〜8年ある』というような言葉をかけてくれたけれど、あまりなぐさめにはならなかった。でも当時はそれしか言いようがなかった」。ゴフォースさんはそう振り返る。

だが今では研究が進んで治療法も進歩した。ワシントンの医療機関の専門医レイ・マーティンズ医師は、「感染者であっても通常の寿命をまっとうでき、非感染者と同じような生活ができる公算が大きい」と指摘する。

薬の服用は1日に1錠だけで済む選択肢もあり、副作用もほとんどなくなった。大部分の感染者にとってHIVは、糖尿病や心臓病といった慢性疾患のような存在になりつつある。

ゴフォースさんは感染が確認されてから21年がたち、47歳になった今も健康で生活している。

1日に5回、40錠あまりの薬を飲んで「恐ろしい」副作用に見舞われていたかつてとは対照的に、今は1日に2回、5錠を服用するだけで、「事実上、副作用はほとんどない」という。

この7年半前からあまりはワシントンの医療機関に看護師として勤務。患者たちに自分の体験を伝え、HIV感染者であっても普通の生活を営めると伝えている。「夢を追い、仕事や家庭を持ち、人生でやりたことは何でもできる。それが今の私たちだ」

感染者の啓発誌のため1994年に発効された雑誌POZは、世界エイズデーを前に毎年11月、エイズとの戦いに功績のあった感染者100人を選んでいる。ゴフォースさんは今年、その1人に選ばれた。

参照元 : CNN.CO.JP