人を不快にさせるだけ……? もてはやされる「ビッグデータ」のヤバさ

2013.09.29
 
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6月末、JR東日本のICカード・Suicaの情報(ビッグデータ)が販売されるも、個人情報が売買されることへの非難が集中し、販売中止に至った事件。騒動の原因については、姉妹サイトのビジネスジャーナルでも、すでに報じている(記事参照)。

これまでにない強力なマーケティングツールとして期待だけが独り歩きしているビッグデータ。そもそも、現状ではどのような使い方をされているのか?

ビッグデータは、住所・氏名・性別・電話番号などがわかる個人情報とは異なる。Suicaを例に挙げれば、改札を通過した駅の名前や日時や、Suicaで買い物した店、本人の性別や年齢は把握することはできるが、個々人の名前や住所まではひも付けされていない。

つまり、ぼんやりとはわかるが、個人までを特定することはできないのだ。にもかかわらず、ビッグデータの利用は「新たなビジネスチャンス」として期待される半面で「個人情報が漏れるのではないか」というネガティブな気持ちを多くの人に抱かせている。

その理由は、なんといってもビッグデータを利用して消費者に提供されるサービスが、なんとなく気持ち悪いからにほかならない。

問題になったJR東日本では、すでにビッグデータを利用して顧客のニーズに合致した商品を開発したり、サービスの「改善」を行っている。例えば、駅構内で見かける最新型のタッチパネル式の自販機で飲み物を買おうとすると、おすすめ商品が表示されるのを見たことはないだろうか。

この自販機、センサーによって自動的に購入者の年齢層と性別を判断、それに気温や時間帯なども計算して、おすすめの商品を表示するというもの。これを導入したのがJR東日本の駅構内の自販機を扱うJR東日本ウォータービジネスだ。同社が、このサービスをリリースするにあたって利用したのが、ビッグデータなのだ。

ビッグデータを利用して、客によって提供するサービスを変える。そのサービスに熱心なのが、コンビニエンスストアだ。コンビニでは、ビッグデータを解析して、特定の年齢層の客には特定の商品のクーポンを渡す。売れ筋ではないが、特定の客層にはリピートされているので、仕入れを継続するなどの使い方をしているのである。

要はビッグデータの利用とは、従来では時間も人手もかかる市場調査を、データを使って簡略かつ正確に行っているものと考えてよい。しかし、客の側に立てば「自分がどこかでした買い物の記録を勝手に利用されている」という気分は拭えない。「これがオススメですよ」と自販機が表示したり、見知らぬ店員にクーポンを渡されても、うれしくなるよりは「なんで俺のこと知ってるんだよ」と思う人も多いはずだ。

膨大なデータを解析して、顧客のニーズに合ったものをとはいっても、実態は最大公約数のものを提供しているにすぎない。要は、余計なお世話なのである。ビッグデータを利用して、その日の株式市場の動向予測を提供しているサービスなどが象徴的だが、あくまで「おそらく、こうですよね? こうなりますよ」と曖昧な答えを示しているにすぎないのだ。

結局、ビッグデータがもてはやされる背景は、誰もが自分や前の世代から受け継がれてきたカンや経験に基づく判断を避けようとしていることがある。ありていにいえば、誰もが「データの裏付け」を言い訳にして責任を取りたくないということだろう。

ビッグデータを利用すれば、便利なこともあるかもしれない。でも、行き着く先は斬新なアイデアが皆無の猿真似合戦なんじゃないだろうか。(文=昼間たかし)

参照元 : 日刊サイゾー
http://www.cyzo.com/2013/09/post_14610.html 


Suicaのデータ販売中止騒動、個人特定不可なのになぜ問題? ビッグデータの難点

2013.08.23

JR東日本のICカード・Suicaの情報(ビッグデータ)が、6月末に販売開始された。しかし、発売直後から「個人情報保護の観点で問題があるのでは?」という指摘が、同社に対し多数寄せられ、7月25日には販売中止を宣言。販売再開は予定されているとはいえ、身近なビッグデータ活用はわずか1カ月で止まってしまった。

この騒動はなぜ起きたのか? 情報を整理してみよう。

●提供される情報は「個人情報」ではない

個人情報というのは、住所や名前、生年月日、職業などの各種情報が「本人を特定できる形で」あることをいう。例えば、「東京都千代田区永田町1-7在住・田中一郎」ならば本人が特定できるから個人情報になるが、「35歳・男性・公務員」というような情報は個人情報にならない。

それを踏まえて考えると、今回販売するビッグデータは、まったく個人情報ではない。SuicaにはIDがあり、各種情報はIDに紐づけて管理されているが、販売情報には、購入時に登録した名前や住所などは一切含まれない。しつこく追いかければ「平日朝6時半にA駅の改札を通り、駅のホームで水のペットボトルを買って、8時にB駅の改札を出て、18時半にB駅から入り、20時にA駅を出る28歳の男性」くらいまでは読み取れるかもしれない。しかし、長期的にひとつのIDのデータを追いかけることはできないようになっているというから、個人の行動を特定することはできないようだ。

Suicaのデータ販売に関する第一報の段階で「個人情報を含まない形で販売」と報じられていたが、具体的にどのようなデータが含まれるのかが、わかりづらかったことと、近年の日本における、過剰な個人情報保護の感覚とが結びついたことが、今回の騒動の発端だと考えられる。

●誰でも買える・使えるわけではない

今回の騒動の発端となったデータ販売については、JR東日本が日立製作所に販売しただけだ。日立がデータを利用して、駅エリアのマーケティング情報として契約企業に提供するサービスを行う予定だった。もともとJR東日本は、個人には販売しないし、日立も「A駅で毎朝電車に乗る20代後半の男性の、勤め先があると思われる駅を教えてください」などという依頼には応じないだろう。

しかも販売にあたっては「提供先で他のデータと紐づけたり、目的以外の利用ができないよう契約で厳格に禁止」しているという。つまり、駅前のコンビニの購買データや、駐輪場の監視カメラ映像などと合わせて分析することで、個人を特定してはいけないということになっているのだ。

●マーケティングに使うための群衆データ

このデータは何千、何万というデータをまとめて分析して「この駅の利用者には高齢者が多い」とか「この駅は繁華街があるせいか、30-40代男性が夜間によく利用している」とか、そういうタイプの情報を引き出すために使われるものだ。「どんな人が多くいるのか?」「どの時間帯がにぎやかなのか?」というようなことを分析して、新規店舗の出店や広告展開に利用する。

個人の行動を追うためのものではないし、追うことができないようにデータは加工され、プライバシーに配慮した契約を締結した業者しか使えないことにもなっている。あまりにも特徴的で、個人の特定につながりそうなデータについては、数値表示やグラフ化を行わないという配慮もあるようだ。

●気持ち悪い人は拒否も可能

問題になってしまった原因は、細かい内容がわかりづらいまま、データ販売の事実だけが報道されてしまったためだろう。「ビッグデータ」という、IT業界におけるトレンドワードではあるものの、一般的には馴染みの薄い、実態のわかりづらい言葉が使われたことも「よくわからないけど不安」という気持ちを煽った部分があるはずだ。

JR東日本としては、個人情報ではないのだから、許可はそもそも必要ないという考えだったようだが、事前に許可を取らなかったのが問題だという見方もあるため、現在は一時販売を停止した上で、Suicaに記録されている情報の収集拒否申請の受け付けを行い、拒否申請のなかったデータについてのみ、許可済とみなして販売再開する予定となっている。

「気持ちが悪い」「なんだか不安だ」という人は、メールで収集対象になることを拒否できる。細かい疑問への回答と拒否方法は、JR東日本のHP上で公開している。ちなみに、対象となっているのはJR東日本が発行したSuicaおよびモバイルSuicaだ。(文=エースラッシュ)

参照元 : ビジネスジャーナル
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2760.html 

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